研究課題/領域番号 |
22KJ2003
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補助金の研究課題番号 |
22J23316 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷村 和哉 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 超原子価化合物 / スズ / 第15族元素 / π共役系分子 / 刺激応答性 / ビスマス |
研究開始時の研究の概要 |
高周期元素は低周期元素と比較して大きな原子軌道を有しているため、オクテット則を超えた超原子価状態を形成することができる。超原子価状態では結合の位置によって異なる電子的な効果を与えることが明らかとなっているが、高周期元素は安定性が低いことなどから機能性材料としての知見は少ないのが現状である。本研究では高周期元素の超原子価状態と、特異な光学特性や材料物性を有する共役系高分子を組み合わせることで新奇機能の発現を志向する。具体的には、超原子価元素が持つ可逆な配位数の変化や共役系高分子が持つ光学特性や成膜性を活かし、環境変化の可視化など新奇機能発現に向けた設計指針を確立することを目指す。
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研究実績の概要 |
研究員は特異な光学特性を示すπ共役系骨格に対して「高周期元素の超原子価状態」を導入し、「元素を反応起点とした機能性材料の創出」を目的としている。昨年度は、第6周期15族元素のビスマスとπ共役系骨格であるアゾベンゼンを用いて新奇超原子価ビスマス化合物の合成し、中心元素であるビスマスのLewis酸性を実験および量子化学計算の観点から評価した。本年度では、「超原子価状態を形成する二核配位子設計」と「元素の酸化反応を利用した刺激応答性」に二つの観点から研究を行った。 まず初めに、「超原子価状態を形成する二核配位子設計」において詳述する。先行研究において、スズの超原子価状態をπ共役系骨格に導入することで、HOMOとLUMOの狭エネルギーギャップ化が起こることを明らかにしている。そこで、本研究ではイミン縮合を用いた簡便な手法で二か所に超原子価スズを導入可能な配位子を新たに合成し、さらなるHOMOとLUMOの狭エネルギーギャップ化を目標とした。結果として、簡便な合成によって、750 nmを超える近赤外発光性の発現に成功し、配位子の設計によって超原子価状態の特異な電子的効果をより際立たせることを明らかにした。 続いて、「元素の酸化を利用した刺激応答性」について述べる。従来はスズおよびビスマスが有するLewis酸性を用いた刺激応答性を達成している。本研究では新たに高周期元素の酸化反応を利用することで新機構での刺激応答性の分子設計指針が確立できると考えた。実際に、第5周期15族のアンチモンを用いた超原子価アンチモン化合物を新規に合成し、中心元素の酸化反応を用いることで固相での電子状態とそれに基づく色彩の変化を確認した。このような「元素の反応性を駆動力とした刺激応答性」は高周期元素の利用拡大に向けた新たな設計指針になるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では、研究員が独自に見出した「超原子価状態を利用した物性制御」を志向した戦略的分子設計に基づき、様々な刺激応答性の発現と新規材料の創出を提案した。今年度は、得られた知見に基づいた「超原子価状態を形成する新たな二核配位子設計」と全く新しい展開である「元素の酸化を利用した刺激応答性」の両側面から研究を展開した。 「超原子価状態を形成する新たな二核配位子設計」において当初の目的通り、狭いHOMOとLUMOのエネルギーギャップに由来した近赤外発光性を示す分子の合成を達成した。加えて超原子価状態を形成することにより、小分子骨格内で電子の偏りを生むことで、対称構造であるにも関わらず負のソルバトクロミズムを引き起こすという非常に珍しい現象を引き起こすことに成功した。このように当初の目的のみならず、各種分光学的な手法から分子の特性を明らかにし次なる分子設計指針を確立した。 続いて、「元素の酸化を利用した刺激応答性」について、従来とは異なる全く新しい機構での刺激応答性を達成した。主要族元素の利用はホウ素の空のp軌道に由来したルイス酸性などが軽元素から重元素にかけて知られており、より相互作用能が強く扱いやすい軽元素が研究対象の中心となっている。一方で、本研究では重元素特有の不安定性を逆手に取り、新たに元素の酸化反応によって主骨格構造を維持しながら元素の酸化数のみを変更することで刺激応答性を発現させるに至った。この成果は、高周期典型元素を用いた化学への新たな学術的視点を提供するとともに、限られた元素を有効活用する「元素戦略」においても非常に有意義な結果であるといえる。 以上のように、当初の計画を概ね達成したことに加え、予期せぬ物性や分子設計指針を見出せたことから、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、特異な光学特性を示すπ共役系骨格に対して「高周期元素の超原子価状態」を導入し、「元素を反応起点とした機能性材料の創出」を目的として研究を進める。特に、「更なる元素多様性」と「元素の還元反応の利用」を大きな目標とする。「更なる元素多様性」としては、近年注目されるペロブスカイト太陽電池に用いられる第6周期15族元素の鉛に注目し、単なる合成および基礎物性評価に留まらず、様々な開始原料からの合成手法についても検討することで、元素資源の有効活用を推進していく予定である。具体的には、メカノケミカル反応によりハロゲン化鉛を配位子に取り込み、元素抽出反応について評価を行う。配位子部分に置換基を導入することで錯体化効率を最大化するとともに、夾雑物存在下における反応性についても検討する。また、これまでの研究より、高分子に紫外線を照射することで分解が起こることが示唆されている。そこで、鉛を取り込んだ材料に光照射し、鉛を放出させることでリサイクルが可能であることを示す。この一連の反応を確立することで、元素を環境中に漏出しない新しいリサイクルプロセスとなることを実証していく。次に、「元素の還元反応の利用」についても、本年度達成した「酸化による刺激応答性」から発展して、逆反応である還元反応を達成することで、可逆な刺激応答性の獲得や触媒機能への発展といった未踏領域の開拓を行う予定である。特に、結合させる分子を選択することで、可逆・不可逆のサイクルを構築し、それぞれリアルタイムセンサーや力学的履歴のメモリなど、次世代の検出技術構築に役立てる。最後にこれらの研究成果を総括することで、「元素の多様性」の観点による元素ごとの特徴を際立たせることで、高周期元素の超原子価状態の利用が新たな機能性材料を設計する上での方法論となることを明らかにしたいと考えている。
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