研究課題/領域番号 |
22KJ2017
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補助金の研究課題番号 |
22J23453 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
熊沢 穣 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 光合成 / 集光タンパク質 / 珪藻 / 微細藻類 / 環境応答 / 物質生産 |
研究開始時の研究の概要 |
地球環境再生に資する資源循環の実現に向けて、微細藻類などの光合成生物による化石資源に依存しない物質生産が注目されている。一方で、野生株の微細藻類を利用した物質生産は未だ高コストであり、必ずしも産業的に重要な物質を生産しない課題もある。本研究では、実用藻類ツノケイソウを対象に、光合成の最適化と異種発現による物質生産を合成生物学的手法で統合し、物質生産能の量的・質的向上を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、光合成の最適化と異種発現による物質生産の統合を目指すものである。具体的には実用珪藻ツノケイソウにおいて、集光性色素タンパク質(FCP, Fucoxanthin Chlorophyll a/c - binding Protein)の構成を最適化し、かつ、有用物質生合成酵素の異種発現を試みる。本年度は主に前者の課題に注力した。 潜在的に余剰である可能性のあるFCP分子種のうち、ゲノム編集による遺伝子欠損変異体作成の標的として、光化学系に直接結合するFCPから2分子種、クライオ電子顕微鏡構造には認められないが高蓄積するFCPから2分子種、特定の光条件で高発現するFCPから1分子種を選択した。そして標的FCPのうち3つの遺伝子欠損変異体を作成することに成功し、その他の候補についても変異体候補株の単離と確認を進めている。すでに得られたFCP欠損変異体については、野生株と異なる光合成特性を有することを認めた。 加えて本年度は、ゲノム編集による特定のFCP欠損や様々な光条件が、光化学系超複合体の形成状態に及ぼす影響を解析するために、Clear Native (CN)-PAGEの条件検討を行なった。珪藻でこれまで利用されてきたCN-PAGEの条件ではチラコイド膜の精製及び泳動中にFCPが光化学系複合体から脱離してしまい、光化学系超複合体ごとのFCPの集合状態を分析することが困難であった。そこで他種藻類や陸上植物で近年使用されつつある界面活性剤を利用することで、CN-PAGE中にFCPが光化学系コアから脱離する問題を解決した。これによって、次年度以降のFCP分子機能解析の基盤技術を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実用珪藻ツノケイソウにおける集光性色素タンパク質(FCP, Fucoxanthin Chlorophyll a/c - binding Protein)について、分子系統解析に加え、解像度の向上したクライオ電子顕微鏡を用いて得られた光化学系超複合体の立体構造から光化学系IIに直接結合するFCPを同定することに成功した。これらの情報を利用して、ゲノム編集によって複数のFCP欠損変異体を取得し、変異体は野生株と異なる光合成能力を有することを確認できたが、一部の標的FCPに対しては変異体の作成が遅れている。 また、多種藻類や陸上植物で近年利用されつつある新手法のCN-PAGEを利用して、珪藻においてこれまでよりも比較的簡便な光化学系とFCPの相互作用解析を可能にしたものの、これを作成したFCP変異体に適用して分析するまでに至らなかったなど、一部で計画からやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1) ゲノム編集で作出した株の詳細な光合成能力、増殖能力を評価する。 2) 得られていない集光性色素タンパク質遺伝子欠損変異体を引き続き作成する。 3) 上記の変異株の光化学系-集光性色素タンパク質の超複合体の形成状態をCN-PAGEを用いて評価する。 4) 光合成能力に変化が見られる変異株のカロテノイド生合成系を評価する。 5) 引き続き葉緑体形質転換を試みる。
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