研究課題/領域番号 |
22KJ2025
|
補助金の研究課題番号 |
22J40119 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 知生 京都大学, 農学研究科, 研究員
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | Docosapentaenoic acid / Aurantiochytrium / ω3-PUFA / ω3-ドコサペンタエン酸 / ラビリンチュラ |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は現在までに、ラビリンチュラ類微生物Aurantiochytrium sp. T7が、炭素源枯渇条件下において希少脂肪酸ω3-ドコサペンタエン酸(ω3-DPA)を高蓄積することを見い出している。これは既知のPUFA生合成経路では説明できない新規機構である可能性が高い。 本申請課題では、T7株における未知のω3-DPA生合成機構の解明を軸とし、ω3-DPA生合成能を有する微生物の探索・精査およびω3-DPA生合成関連酵素遺伝子の特定を行なう。また、その知見を活用し、新たな脂肪酸生合成経路の解明ならびにω3-DPA発酵生産を起点としたω3-DPA誘導体群の創出に繋げる。
|
研究実績の概要 |
本研究課題では、Aurantiochytrium sp. T7が炭素源濃度低下時にω3-DPAを著量蓄積することを見いだし、その生合成機構の解明を目的としている。当該年度は以下の4項目を実施した。 ①T7株におけるω3-DPA非生産性変異株の取得:T7株に対し化学薬剤およびUV照射による変異処理を行ない、約300株の処理株を得たが、ω3-DPA生産性に変化のある株は見出せなかった。これは当該経路が高度な頑健性を有しているか、当該経路に関する変異が致死である可能性を示唆している。 ②T7株とω3-DPA非生産株とのゲノム及び発現プロファイル比較:T7株およびω3-DPA非生産近縁株A. limacinum SR21の全ゲノム解読を行ない配列を比較したところ、脂肪酸生合成に関わる複数の酵素遺伝子において数塩基単位の差異を見出した。また、SR21株およびT7株のω3-DPA生産/非生産条件時それぞれのRNA-seq解析を行い、現在比較分析中である。 ③T7株における形質転換系の開発:遺伝子導入マーカーとしてゼオシン耐性遺伝子、恒常発現プロモーターしてユビキチンプロモーターを用い、大腸菌由来β-glucuronidase(GUS)発現ベクターを構築した。遺伝子銃法にてT7株への本ベクター導入を試み、条件検討を重ねた結果、ゼオシン耐性を示すコロニーの取得に成功した。得られた株は生育・脂肪酸生産能ともに宿主株と遜色なく、GUSを安定的に発現していた。以上、T7株における遺伝子導入技術を確立することができた。 ④T7株以外のω3-DPA高生産株の探索:前年度に引き続き炭素源枯渇条件下でのスクリーニングを行なったが、ω3-DPA高蓄積株は見出せなかった。しかしながらこの探索で副産物的に見出したDHA高生産株6-2株について、当該研究室の別グループにより査読付論文投稿に至る成果が上がっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、微生物におけるω3-ドコサペンタエン酸生合成経路の解明を目的とし、Aurantiochytrium sp. T7に関する種々の実験および解析を行なった。結果として、本経路に関連すると考えられる具体的な候補酵素遺伝子を複数見出した。また、今後の展開を見据えてT7株の宿主-ベクター系形質転換法の開発に取り組み、外来遺伝子の導入および発現に成功した。これは当該課題のみならず、T7株に関する研究、ひいてはラビリンチュラ類微生物全体にも応用可能な技術であり、きわめて有用な成果であるといえる。また、前年度に引き続きω3-DPA生産菌の探索にも取り組み、目的の株は得られなかったものの、探索の過程で見出された新規株が当該研究室の別チームにおいて論文投稿に至る成果に繋がった。 知的財産権等の関係上、学会等における発表業績は乏しいものの、以上のように進捗として十分な成果をあげており、また、担当外の研究にも刺激を与えていることから、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度までに得られた知見に基づき、ω3-DPA生合成の鍵酵素の特定に着手する。具体的には、ω3-DPA生産菌/非生産菌のゲノム比較およびω3-DPA生産条件/非生産条件におけるRNA-seq解析で得られた結果から、ω3-DPA 生合成に関わる候補遺伝子を選出、サブクローニングを行なう。得られた候補酵素遺伝子群について、すでに形質転換系の開発されているPUFA 生産微生物(酵母、糸状菌など)へ導入し、ω3-DPA 生合成への関与を精査する。また、これら候補遺伝子群を、当該年度までに開発した形質転換技術を用いてAurantiochytrium sp. T7へ導入し、セルフクローニングによるω3-DPA高生産株の構築を試みる。さらに、シクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、P450 といった既知の脂肪酸誘導体化酵素の知見を応用し、ω3-DPA 誘導体の生合成を試みる。
|