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ヘーゲル論理学における「概念」の哲学史的再解釈を通じた存在と当為の区別の再考

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ2034
補助金の研究課題番号 22J00747 (2022)
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金 (2023)
補助金 (2022)
応募区分国内
審査区分 小区分01010:哲学および倫理学関連
研究機関京都大学

研究代表者

岡崎 秀二郎  京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワードヘーゲル / メタ倫理学 / 推論主義 / 真矛盾主義 / カント / 自然主義 / 倫理学
研究開始時の研究の概要

本研究は、ヘーゲルの「概念」観を哲学史的に再構成し、そこで提示されている〈規範性と不可分な実在性〉を含意する「概念」の理解を現代哲学に接続可能な形で定式化することによって、現代倫理学の前提とされている「存在」と「当為」の区別の妥当範囲を問い直すことを試みるものである。とくに本研究期間では、前年度で明らかにした思想史的背景を踏まえた上で、ヘーゲルの 「概念」観をより明確に定式化し、その「概念」観を位置づけ直すための基礎的なフレームワークとして、現代哲学に接続可能な論理学的観点を確定することを行う。

研究実績の概要

本研究は、ヘーゲルの「概念」観の再構成を通じて、その「概念」が含意している〈規範と不可分な実在性〉の理解を踏まえつつ、(メタ倫理学に代表される)現代の倫理学の基本的前提とされている「存在」と「当為」の区別の妥当範囲を明らかにすることを目的とするものである。またその研究手法として、ヘーゲルの主著『大論理学』「概念論」に見出される(「色彩」に代表される)自然的対象と文脈にフォーカスし、その背景にある思想史の分析を踏まえつつ、ヘーゲルの「概念」観がもつ理論的射程を明確化することを目指すものである。
本年度はとくに、直近において現れている『大論理学』の解釈として、同著の「概念論」のうちにカントの『判断力批判』の「自然目的」論の影響を強く見るカレン・エン(Karen Ng)や、またヘーゲルの「概念」観のうちにアリストテレスに通じる「自然主義」的な傾向が反映されていることを明らかにしたエレナ・フィカラ(Elena Ficara)らによる代表的な二つの研究を基準点に定めることによって、本研究を進めた。
より具体的には、本研究は第一に、エンと同様に、『大論理学』「概念論」の判断論から推論論への転換点をなす「概念の判断」と、『判断力批判』において規範的な判断の類型として提示されている「目的論的判断」の理解との連続性に着目した上で、それらの分析を通じてヘーゲル的な「概念」に内在する規範性と「推論」との関係を明らかにした。また第二に、フィカラが整理を与えた「真理」論という枠組みに沿って、ヘーゲル論理学の核心をなす「弁証法」の論理構造を定式化し、ヘーゲルの「弁証法」において概念が内在させているものとしての「矛盾」の含意を明確化することを試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究期間の開始時点における研究目的は、ヘーゲルの『大論理学』「概念論」について、(1)同著がもつ思想史的背景を踏まえてヘーゲルの「概念」観をより明確に定式化すること、そして(2)その「概念」観を位置づけ直すための基礎的なフレームワークとして、現代哲学に接続可能な論理学的観点を確定することに置かれていた。
(1)について、本研究は『大論理学』における「概念の判断」と、『判断力批判』における「目的論的判断」との間に見られる思想史的影響関係にフォーカスし、そこからヘーゲルの「概念」に伴われる規範性の意味を、「推論」という文脈に置き直すことで明らかにしたものである。本研究はその成果として、「推論」や「理由の空間」という観点に基づいてカントとヘーゲルの思想的連続性を重視する、現代の「推論主義」的解釈との接点を持ちえる形で、ヘーゲルの「概念」観を改めて定式化し、研究発表の場においてもフィードバックを得ることができたと考えられる。
また(2)について、本研究はこのヘーゲルの「概念」観をより一般的な論理学の文脈の中で評価することを目指し、「真理」論という論理学上の枠組みを援用することによって『大論理学』の「概念」観の再解釈を行ったものである。とくに本研究はその具体的な解釈方針として、現代の論理学において存在感を増しつつある、「真矛盾主義(Dialetheism)」という立場を導入し、その立場において主張される「真なる矛盾」という発想が、『大論理学』においても見出されうることを示した。本研究は、この観点から、ヘーゲル論理学の核心をなす「弁証法」と、そこで主張されている「矛盾」のもつ含意を、現代論理学にも共有可能な形で明確化する道筋をつけることができたと考えられる。

今後の研究の推進方策

令和5年度の研究期間では、とくに直近の『大論理学』に対する研究を足がかりとして、「推論主義」や「真矛盾主義」といった、現代の論理学の文脈において新たに立ち現れている観点からヘーゲルの「概念」観を再解釈する道筋がつけられた。今後の研究においては、この論理学的観点から整理されたヘーゲル的「概念」に内在する規範性の理解そのものを、現代の倫理学を含めたより広い文脈の中で位置づけ直すことを試みる。
とくに本研究は、ここまでのヘーゲルの真理論にフォーカスした研究の過程において、その真理の理解が、イェーナ期におけるヘーゲルの判断論から、ベルリン期の『エンツュクロペディー』において論じられる「客観に対する思想の態度」の分類に至る基底に存在し続けていることを同時に明らかにした。
このように、「主観」が「客観」に対して伴いうる関係性としてヘーゲル哲学が一貫して想定している「思想の態度」と同様に、客観的な事象に対して我々の主観が取りえる関係を定式化している立場が、現代哲学における認識論を中心に見出される。本研究はそうした現代哲学においても共有可能な基礎的枠組みを援用することで、ヘーゲルがこの「思想の態度」に基づいて導こうとする、「概念」の規範性の内実を探究していく予定である。とくに今後の計画としては、これまで本研究が参照してきた、推論主義に代表されるプラグマティズム的ヘーゲル解釈の前提にある「概念主義(conceptualism)」を一つの基準点として設定した上で、この基準点を軸にしながら、イェーナ期からベルリン期へと連続するヘーゲルの「概念」観を、客観に関わる規範性を伴うものとして具体化していく予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ヘーゲルの「根拠」論と「理由の空間」の限界2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎秀二郎
    • 学会等名
      第3回推論主義研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-28   更新日: 2024-12-25  

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