研究課題/領域番号 |
22KJ2041
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補助金の研究課題番号 |
22J23488 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山中 波人 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 固液共存域変形 / 凝固 / Multi-phase-field法 / 格子ボルツマン法 / 大規模計算 |
研究開始時の研究の概要 |
鋳造過程に外力が生じると固液共存域変形が生じる.これは,結晶同士の接触と再配列によるレオロジー挙動により凝固欠陥が形成される一方で,小さな外力でも変形し,結晶粒が容易に微細化することが知られているため,その結晶粒スケールでの評価が喫緊の課題である.そこで,本研究では,固体の運動と液相流動を伴う多結晶凝固を再現可能なmulti-phase-field格子ボルツマンモデルに,固体変形を再現するための粒子法を連成した,固液共存域変形モデルを開発し,凝固過程による微細組織形成の達成を目指す.
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研究実績の概要 |
鋳造過程に生じる固液共存域変形は,凝固欠陥の形成を引き起こす可能性がある一方で,小さな外力で結晶粒の微細化を達成できるため,その現象の高精度な予測が喫緊の課題である.近年,固液共存域変形のその場観察が大型放射光施設を用いることで可能となっているが,系統的評価による現象理解のためには数値シミュレーションが不可欠である.そこで本研究では,合金凝固時の固体運動と変形を含む固液共存域変形を高精度に再現可能な数値モデルを構築し,固液共存域の固体の塑性変形と分断を最適化し,結晶粒微細化を引き起こす最適な条件の探索を目的としている. 昨年度はまず,修士課程で構築した固液共存域変形のその場観察を再現可能としたmulti-phase-field格子ボルツマンモデルを用いて,固液共存域変形の2Dシミュレーションを行った.シミュレーション結果から,固液共存域変形に特徴的なダイラタンシーによる局所的な固相率変化が再現できることを確認した.次に固液共存域変形の定量的評価を目的として,小規模計算での固相率の影響評価とGPUスパコンTSUBAME3.0を用いた大規模計算による結晶形態の影響評価を行い,固液共存域変形のせん断帯形成に関する定量的評価・考察を行っており,現在ジャーナル論文投稿に向けて論文執筆を進めている.また,その場観察など実験で行われている固液共存域変形の評価では,外力の与え方に制限があり,単軸引張や単純せん断といった理想的な外力条件下でのせん断帯形成メカニズムを評価することができない.そこで,固液共存域の単純せん断変形を評価可能なモデルを開発し,よりシンプルな条件下でのせん断帯形成の評価を可能とした.現在はこれに関して系統的評価によるせん断帯形成の定量化を試みている.また,固液共存域変形の3Dモデルの開発を行い,固液共存域変形のその場観察の3D変形挙動を再現可能とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
そもそもの計算条件の選定に問題があったため,継続的な成果の創出を維持することができていない点が主な理由であると考えている.研究開始当初は固液共存域変形のその場観察を完全に再現することによって,固液共存域変形の詳細なメカニズム解明を試みていた.しかし,継続的に評価を行う中で,計算で再現するための制約として系全体の固相率が上昇してしまうという問題があるため,実験との齟齬が解消できないという結論に至った.また,その場観察を再現するために必要な計算コストも膨大であるため,その場観察を完全に再現するという当初の目的を再考する必要があった.以上のように研究開始時点で予測していない問題解決のため,研究計画通りの研究結果を示すことができていない.しかしながら,これまで行った評価によって,固液共存域変形の基礎的な応答を理解することができており,現在計算条件を変更して行っているシミュレーションの現象評価に即座に適用することができるため,本年度の効率的な成果創出に大きく活用できる.また,計算結果を処理するためのポスト処理コードは作成済みであり,データ整理のノウハウを十分に積んでいるため,本年度はそれらを直接活かして作業することができるため,昨年度の遅れは十分取り返せるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で蓄積した固液共存域変形の変形挙動の知見をもとに,一刻も早く現在を固なっている2D固液共存域変形に関する研究成果を出す.計算条件の見直しなどを昨年度行ったので,今年度は繰り返さないよう徹底した数値モデルの妥当性評価と現象メカニズムの考察を行う. また,昨年度構築した固液共存体の単純せん断変形の評価手法を用いて,固液共存域せん断変形における,せん断帯形成の形成メカニズム解明を試みる.これは,構築した手法による評価に加え,先行研究で開発された結晶粒などを考慮しないマクロモデルとの比較を行い,変形挙動の支配的なパラメータの抽出を行う. 続いて,本研究課題で最も重要な現象である結晶粒微細化を再現するために,現在使用している運動を伴う多結晶凝固を再現するためのmulti-phase-field格子ボルツマンモデルに,固体変形を再現するための粒子法を連成し,固体変形による結晶粒内の結晶方位差の変化と,それによって結晶粒が溶断される現象を再現可能とする.Phase-field法と粒子法の連成による結晶粒微細化の数値シミュレーションによる再現は非常にチャレンジングな課題であるため,モデル開発には困難が予想される.もし,達成が困難である場合は,先行研究で固体変形を再現するために用いられていたmaterial point法の採用や有限要素法のような, 粒子法とは異なる数値手法によるモデル開発も検討する.
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