研究課題/領域番号 |
22KJ2081
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補助金の研究課題番号 |
21J21394 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堤 友美 大阪大学, 歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 中枢神経経路学 / 咀嚼筋筋紡錘感覚 / 三叉神経系 / 小脳 / 咀嚼筋感覚 |
研究開始時の研究の概要 |
咀嚼運動の調節に関わる小脳の神経機構の研究は進んでいない。咀嚼筋内に存在する筋紡錘に生ずる感覚(咀嚼筋筋紡錘感覚)は、円滑な咀嚼運動に必要不可欠な感覚情報である。私は咀嚼運動の制御に関わる小脳の神経機構に、この咀嚼筋感覚の小脳入力が強く関与していると考えた。本研究では、ラットで、形態学的ならびに生理学的研究法を用いてこれらの解明をめざす。まず、形態学的研究法にて咀嚼筋感覚の小脳入力部位を明らかにし、他の入力の特徴と比較する。次に、生理学的研究法を用いて、形態学的に明らかになった経路の機能的特徴を解明する。
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研究実績の概要 |
顎運動の制御に小脳機能の関与が考えられているが、その詳細な神経機構は不明であった。本研究は、咀嚼筋筋紡錘感覚の小脳投射部位の解明および小脳に伝達された咀嚼筋筋紡錘感覚の運動調節機構の解明を目標としている。R3年度の研究で明らかにした、咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核から小脳皮質への投射に関する研究を2022年7月に論文として出版することができた。また、この内容を2022年7月開催の日本神経科学会と2023年3月開催のOral Neuroscienceにて口頭で発表を行った。さらにR4年度の後半は、咀嚼筋筋紡錘感覚に関わる小脳核部位を明らかにするため、咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核から小脳核への投射の解明を目指した実験を開始した。 順行性神経回路トレーサーであるBDAを充填したガラス管電極を橋に刺入した後、咬筋神経の電気刺激と下顎の下制により賦活化された咀嚼筋筋紡錘感覚の入力を電極から記録して三叉神経上核を同定し、そこにBDAを電気泳動にて注入した。脳切片を作成後、BDAが三叉神経上核内に限定して注入できた動物を選び、BDA標識神経終末の小脳核内の分布を観察した。両側の小脳核の内側核および中位核の一部分に多数の標識軸索終末が見られた。これにより、小脳核への咀嚼筋筋紡錘感覚の入力部位が形態学的に明らかになった。この結果は、咬筋神経の電気刺激と下顎の下制により賦活化された咀嚼筋筋紡錘感覚が、小脳核内のこれらの2カ所から記録できる可能性と、これらの記録部位に逆行性トレーサーを注入し、標識細胞を検索すれば小脳核に投射する三叉神経上核ニューロンを同定できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、咀嚼筋筋紡錘感覚の小脳投射部位の解明および小脳に伝達された咀嚼筋感覚の運動調節機構の解明を目標としている。R4年度の前半は、R3年度の研究で明らかにした、咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核から小脳皮質への投射に関する論文の執筆及び投稿を行い、R4年7月に受理・出版された。また、R4年度の前半に発表した、咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核から小脳皮質への投射に関する論文の内容をR4年7月開催の日本神経科学会とR5年3月開催のOral Neuroscienceにて口頭で発表を行った。R4年度の後半は、咀嚼筋筋紡錘感覚に関わる小脳核部位を明らかにするため、咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核から小脳核への投射の解明を目指した実験を開始し、小脳核内の2カ所に強く投射することがわかった。R5年度の実験の基礎データを得ることも出来たので、R4年度の研究の進捗はおおむね良好だったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究での目標である、咀嚼筋筋紡錘感覚の小脳投射部位の解明および小脳に伝達された咀嚼筋感覚の運動調節機構の解明うち、咀嚼筋筋紡錘感覚の小脳皮質投射部位の解明は本年度の前半で達成し、咀嚼筋筋紡錘感覚の小脳核投射部位の解明は本年度の後半に開始した。咀嚼筋感覚が三叉神経上核経由で入力する小脳核部位が2カ所あることを明らかにしたことを受け、咬筋神経の電気刺激と下顎の下制により賦活化された咀嚼筋筋紡錘感覚が、小脳核内のこれらの2カ所から記録できる可能性と、これらの記録部位に逆行性トレーサーを注入し、標識細胞を検索すれば小脳核に投射する三叉神経上核ニューロンを同定できる可能性が示された。これらの可能性を確かめる実験を、R5年度の研究として行う予定である。また、三叉神経上核経由で咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する小脳核部位と、R3年度に明らかにした三叉神経上核経由で咀嚼筋筋紡錘感覚が入力する小脳皮質部位から小脳核に投射する部位とが同じ部位であるか否かを明らかにするため、咀嚼筋筋紡錘感覚が伝達される小脳皮質を電気生理学的に同定した後、順行性トレーサーを注入し、小脳核内の標識軸索終末を検索する実験を行う予定である。
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