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ベトナム語の音韻の実験的研究:諸方言の音節・韻律に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ2104
補助金の研究課題番号 22J00863 (2022)
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金 (2023)
補助金 (2022)
応募区分国内
審査区分 小区分02060:言語学関連
研究機関大阪大学

研究代表者

山岡 翔  大阪大学, 人文学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードベトナム語 / 中部方言 / 南部方言 / 音節 / 音響音声学 / 調音音声学 / 声調変化 / パテン語 / 教育 / 少数言語 / 声調
研究開始時の研究の概要

話し言葉の媒体である音声は言語コミュニケーションにおける重要な役割を果たす。なかでもベトナム語は非常に豊富な音体系をもつが、これまでのベトナム語の音声研究は研究者の聴覚印象に頼った主観的なものが多く、未解決の問題も多い。そこで、本研究ではベトナム語の音声の特徴を種々の機器をもちいて客観的に記述することを目指す。とくに、ベトナム語の音声研究は方言ごとに成果のばらつきがあるので、標準語の基盤となる北部方言だけでなく、中部・南部方言といった様々な方言を対象とする。また、ひとまとまりの発音の単位である音節、複数の音節にまたがる特徴である韻律の両面を検討することで、音声を多層的にとらえて究明していく。

研究実績の概要

今年度は夏季に行ったベトナムでのフィールド調査によりベトナム語中部・南部方言の音節内部構造についてのデータを得て、そのデータの分析を進めていった。このフィールド調査ではベトナム語中部方言話者15名、ベトナム語南部方言話者17名が、約 200 種類の音節を単独で読み上げた際の音声波形と EGG 波形を得ることができた。現在、各話者の正規化値の特徴をもとに、話者ごとの発音を分類し、グループごとに正規化値を平均する方針で分析を進めている。
他方、研究計画段階では想定していなかった知見が思いがけず得られた。自身が今年度に参加した国際学会で知った曲線声調の歴史的変化の通時的傾向についての仮説をもとに、手元にあるベトナム語北部方言の声調の個人差を分析したところ、若年層と高年層の間で声調に変化が起こっていることが示唆された。さらにこの言語の声調の音響データを可能な限り遡ったところ、ピッチターゲットのみからなる声調の変化は上述の通時的傾向と適合する一方、喉頭化ターゲットをもつ声調は、上述の傾向とは適合せず、むしろ喉頭化のもつ stiffness によりピッチが引き上げられていることが示唆された。この内容については研究発表および論文投稿を行った。なお、研究発表については大会発表賞という形で客観的な評価も得られた。
そしてベトナム語の研究と並行して、昨年度から取り組んでいるパテン語の音声音韻体系についても引き続き研究を進めた。夏季に行ったベトナム語の調査の合間にパテン語の調査も併せて行い、パテン語話者から 3000 語程度の基礎語彙を発音した音声と IPA 表記を得た。また、パテン語のいくつかの音節を発した際の EGG 波形のほか、超音波エコーによる正中矢状面の舌形状に関するデータも得ることができた。ここで得られたデータの中には声質に関する珍しい最小対が含まれており、それを題材に研究発表も行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画ではベトナム語南部方言や中部方言の音節内部構造の研究は今年度までに目途をつける予定であったが、コロナ感染状況の事情などにより当初の予定からかなり遅れて本年度の夏にようやくフィールド調査が行われることとなったことや、データを収集した後に当初予定していた分析方法をそのまま適用すると問題があることが明らかになったことにより、現在も引き続きデータの分析作業を行っている最中である。データに分析方法について具体的に言うと、研究計画段階では収集した音響データから必要なパラメータを抽出し、話者間正規化したうえで方言ごとに平均をとることで、各方言に通底する音声特徴をあぶりだそうと考えていた。しかし、実際に得られたデータには、同一方言の話者間であってもかなりの程度の個人差が認められたため、単に正規化値の平均をとるだけでは方言の特徴を観察するのに不十分であることが予見された。そのため、このような個人差を考慮しながら方言話者に共通する特徴をあぶりだす方法を確立する必要に迫られている。現状は各話者の正規化値の特徴をもとに、話者ごとの発音を分類し、グループごとに正規化値を平均する方針で分析を進めている。
以上のような理由によりやや進捗は遅延しているといえる。ただし、研究計画段階では想起していなかった研究内容について、思いがけずよい結果が得られた面もあった。具体的には、参加した国際学会で新たに知った声調変化に関する理論をすでに手元にあったデータに適用したところ、声調変化の傾向に関する新規性のある指摘ができたというもので、この内容は研究発表賞という形で客観的な評価も得られている。そのため、研究課題全体としての進捗は遅延しているものの、得られた結果はそれなりに多かったと評価している。

今後の研究の推進方策

今後はできるだけ早期にベトナム語南部方言・中部方言のデータを分析し、これらの方言の音節内部構造についての研究を推進することである。また、少なくとも夏季にはベトナムへ再度フィールド調査に行き、本研究課題のもうひとつの軸であるベトナム語北部方言の韻律構造に関するデータを収集し、そちらもできるだけ早く分析を進めていく。夏季のフィールド調査でデータを収集しきれなかった、あるいは取りこぼしたデータがある場合は、さらに冬季にもフィールド調査を実施する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] タイグエン師範大学(ベトナム)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] タイグエン師範大学(ベトナム)

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] Teaching Vietnamese at Osaka University (Japan) - Achievements and Prospects2023

    • 著者名/発表者名
      Nguyen, Thu Quynh, Thu Hang Duong, Masaaki Shimizu & Sho Yamaoka
    • 雑誌名

      Journal of Viet Nam Hoc

      巻: 4

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] The issue on the articulatory differences between Northern Vietnamese onset and coda: based on the properties of place and/or articulator2023

    • 著者名/発表者名
      Yamaoka, Sho
    • 学会等名
      International Scholars of Vietnamese Linguistics (ISVL-4)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ベトナム語北部方言の声調の変化について:世代差をもとに2023

    • 著者名/発表者名
      山岡翔
    • 学会等名
      第37回 日本音声学会全国大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Preliminary Investigation of the Vietnamese Pa Then Tonal System: from the Experimental Phonetics Perspective2023

    • 著者名/発表者名
      Nguyen, Thu Quynh & Sho Yamaoka
    • 学会等名
      The 32nd Meeting of the South East Asian Linguistic Society (SEALS32)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ベトナム語北部方言の声調体系の再考:音声の産出情報に着目して2022

    • 著者名/発表者名
      山岡翔
    • 学会等名
      日本言語学会 第164回大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] ベトナム語ハノイ方言の音素分析の諸問題:音声から音韻へのアプローチ2022

    • 著者名/発表者名
      山岡翔
    • 学会等名
      関西音韻論研究会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] ベトナム語ハノイ方言の音韻分析:音声情報から音韻情報を考える2022

    • 著者名/発表者名
      山岡翔
    • 学会等名
      近畿音声言語研究会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] ベトナムにおける Pa Then 語変種の声調体系に関する予備的考察2022

    • 著者名/発表者名
      山岡翔, Nguyen Thu Quynh
    • 学会等名
      言語記述研究会 第126回例会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] The phonological analysis of the “V + dorsal coda” rhymes in Hanoi Vietnamese2022

    • 著者名/発表者名
      Yamaoka Sho
    • 学会等名
      The 31st Meeting of the South East Asian Linguistic Society
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Day hoc tieng Viet tai Dai hoc Osaka (Nhat Ban) thanh tuu va trien vong2022

    • 著者名/発表者名
      Nguyen Thu Quynh, Duong Thu Hang, Shimizu Masaaki, Yamaoka Sho
    • 学会等名
      Hoi thao quoc te nam 2022 Giao luu van hoa, giao duc Phap Viet Nhat: Lich su va phat trien
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] The issue on falling diphthongs in Hanoi Vietnamese: the reconsideration of the phonological analysis and the existence of 4th diphthong2022

    • 著者名/発表者名
      Yamaoka Sho
    • 学会等名
      ISVL-3
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [図書] ベトナム語北部方言の音節論2023

    • 著者名/発表者名
      山岡 翔
    • 総ページ数
      398
    • 出版者
      京都大学学術出版会
    • ISBN
      9784814004720
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-28   更新日: 2024-12-25  

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