研究課題/領域番号 |
22KJ2108
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補助金の研究課題番号 |
22J01448 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松永 倫子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / 母子相互作用 / 育児ストレス / うつ / 情動制御 / レジリエンス / 迷走神経 / 食生活習慣 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトは,内受容感覚(自己身体内部の生理状態に関する感覚)と外受容感覚(外界の刺激)を統合して様々な認知処理を行う.乳児は日常的に養育者と身体を接触させて相互作用する経験を蓄積する中で身体内部状態を安定させる.また,外受容感覚刺激と統合されることにより自他の身体表象や心的機能を創発させていくとみられる.本研究では,母子間での身体内部状態の同期の個人差とその発達的変化を多指標で評価し,行動表現系の多様性との関連を実証的に明らかにする.さらに,身体内部状態の同期の個人差を生み出す要因のうち腸内細菌叢に着目し,食事(栄養状態)や生活習慣との関連を検討する.
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研究実績の概要 |
ヒトは,内受容感覚(自己身体内部の生理状態に関する感覚)と外受容感覚(外界の刺激)を統合して様々な認知処理を行う.乳児は日常的に養育者と身体を接触させて相互作用する経験を蓄積する中で身体内部状態を安定させる.また,外受容感覚刺激と統合されることにより自他の身体表象や心的機能を創発させていくとみられる.本研究では,母子間での身体内部状態の同期の個人差とその発達的変化を多指標で評価し,行動表現系の多様性との関連を実証的に明らかにする.さらに,身体内部状態の同期の個人差を生み出す要因のうち腸内細菌叢に着目し,食事(栄養状態)や生活習慣との関連を検討する. 本年度の研究成果は,次の3点に大別される.1点目は,母親の育児ストレスやうつに関連する腸内細菌叢や食生活習慣の関連が明らかになった.育児ストレスやうつ症状がカットオフ値を超えるリスク群の母親は健常群の母親よりも腸内細菌叢の多様性が低く,主に酪酸産生に関連する腸内細菌が低下していることが明らかになった.また,日本食の摂取が母親の心身のレジリエンス向上に寄与する可能性が示された.産後の母親の身体状態を包括的に評価する質問紙尺度(MDPS尺度)も開発し,身体症状から母親のうつを予測できることが示された.本成果は査読付き国際誌「Frontiers in Psychiatry」に採択・掲載され,特許申請も行った(特願番号:2022-135675).2点目に,母子間の腸内細菌叢―自律神経―認知・精神機能の関連において興味深い結果が得られた.特に子どもの迷走神経機能の高さが,腸内細菌の多様性の高さや精神・認知発達と関連することが明らかになった.3点目に,母子の自律神経機能を評価する時系列データ解析の手法の開発を進めることができ,母子の自律神経データの変動パターンから母親の育児ストレスを予測することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模データを基に,母子の腸内細菌叢ー精神状態・認知発達との関連に関する研究成果を得ることができ,国際学会での発表,論文化,特許取得を進めることができている.さらに,本研究計画を遂行する上で重要となる,自律神経データから母子の同期パターンを評価するための時系列データの解析手法の開発を進めることができた.これは,今後本格的に計測を開始する実験室調査でのデータの解析を促進するものである.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では3-5ヶ月時点と6-9ヶ月時点での二時点において縦断的に実験室調査を実施する予定であった.今年度の研究成果を基に,仮説や実験室での調査内容をさらに精査し,生後8ヶ月時点と18ヶ月時点の二時点において対面調査を実施するよう,研究計画を変更した.具体的には,2023年度は,生後8ヶ月時点での乳児とその母親80名に1回目のデータ計測を行う.調査室での母子相互作用場面の観察に加え,母子の唾液採取,心電図計測(自律神経系の評価),視線計測課題,母親の身体状態や運動機能の評価を行う.今年度は,2回目の縦断データ計測も一部開始する.2回目は1回目の計測と同様の内容を行い,8ヶ月時点から18ヶ月時点にかけての変化を評価する.
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