研究課題/領域番号 |
22KJ2134
|
補助金の研究課題番号 |
22J10955 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
王 雷 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | NiTiコーティング / 形状記憶 / 超弾性 / 電子ビーム溶融 / その場合金化 / TiNiコーティング / 形状記憶合金 / その場合成 |
研究開始時の研究の概要 |
TiNi合金は形状記憶合金として広く認識され、低密度、優れた耐腐食性という利点もある。ただし、TiNi合金の価格は鉄鋼材料などに比べて非常に高い。そのため、大型部品全体をTiNi合金で製造するとコストが高くなる。TiNi合金をコーティングに用いると、摩耗や腐食に対する保護効果が得られると同時に、加熱後の表面の変形や凹みを回復する効果も期待される。本研究では、電子ビーム加工技術を用いた新規なコーティング法の開発と組織制御により、溶射など従来技術で得られない表面特性を有するTiNiコーティンを開発する。さらに、その物理化学的および冶金学な解析により、材料学の発展に寄与する。
|
研究実績の概要 |
2023年には電子ビームを用いてCP-Ti基材表面に作製したNiTiコーティングの微細構造を熱処理によって制御し、その微細構造の観察と物性分析実験を行った。具体的には、昨年の実験結果をまとめた方法を使って、NiメッキしたCP-Ti基材への電子ビーム照射により、Ti:Ni=50:50(at%)に近い組成のTi-richとNi-richのNiTiコーティングを形成した。そして、それらのコーティングに対し、900°Cでの溶体化熱処理と400°Cでの時効熱処理を施した。熱処理前後のコーティングの構成相をX線回折(XRD)で同定し、断面の組織を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。さらに、ナノインデンテーションを用いて機械的特性を評価した。XRDとSEMで試料の評価を行った結果、熱処理により、Ni-richコーティングでは、マトリックスであるNiTi相中に1 μm程度の大きさのNi3Ti相が散在したが、Ti-richコーティングは比較的均質な組織を呈した。ナノインデンテーション試験の結果、Ni-richコーティングへの熱処理の効果は不明瞭であったが、Ti-richコーティングの場合は熱処理後によって耐摩耗性の指標であるコーティングの硬さとヤング率の比が向上し、歪回復率も顕著に改善された。さらに、熱処理後のコーティングに超弾性がある可能性も示している。これらの実験結果は、電子ビーム溶解によってその場で合成されたNiTiコーティングの微細組織を熱処理によって調整することにより、コーティングの機械的特性を改善できる可能性の高さを示している。 以上のように、Ti/Ni粉末床の溶融凝固に代えて、Niメッキとその後の電子ビーム照射による、超弾性NiTiコーティングの新しい生成法を実証するとともに、超弾性高強度マルチ機能性コーティングのための複材特性制御に関する学術的指針を示すことができた。
|