研究課題
特別研究員奨励費
C9orf72遺伝子の非翻訳領域におけるGGGGCCリピート異常伸長変異は前頭側頭葉変性症(FTLD)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の共通の遺伝的原因の1つである。このリピート配列がRAN翻訳と呼ばれる非典型的な翻訳により、その毒性が病態に関与すると考えられているDPRタンパクに翻訳される。本研究ではRAN翻訳の詳細なメカニズムを明らかにすることでC9orf72遺伝子関連FTLD/ALSの新規治療法の開発を目指す。
本研究ではC9orf72遺伝子変異型の前頭側頭葉変性症(C9-FTLD)における非定型翻訳の詳細なメカニズムを解明することにより新規治療法を探索することを目的としてきた。C9-FTLDでは、当該遺伝子中にあるGGGGCCリピート配列が異常に伸長しており、この配列が転写されRAN翻訳(repeat-associated non-AUG translation)という非定型翻訳を受けることにより毒性DPRタンパク質が産生される。本研究では5種類あるDPRタンパク質のうちの1つpoly-GA(Glycine-Alanine)タンパク質の翻訳を調整する因子としてeIF5を同定した。細胞モデルを用いた検討では、eIF5の発現を低下させるとpoly-GAの発現量が低下し、eIF5を過剰発現するとpoly-GAは増加した。eIF5の過剰発現はRAN翻訳を促進するが通常の翻訳は増加させないことも明らかにした。さらに、リピートを発現させたショウジョウバエモデルにおけるeIF5の発現低下はpoly-GAの発現量を減少させた。以上の結果からeIF5はC9orf72遺伝子変異型の前頭側頭変性症の治療ターゲットとなる可能性があると考えている。これまでに得た研究成果について国際誌Journal of Biological chemistryに報告し、第42回日本認知症学会とリスボンで開催されたADPD 2024での発表も行った。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 9件)
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