研究課題/領域番号 |
22KJ2171
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補助金の研究課題番号 |
22J14119 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西窪 航 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | アミノ酸トランスポーター / LAT1 / SLC7A5 / 必須アミノ酸 / 細胞増殖 / がん細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
がん細胞における栄養素の取込み口は,がん治療薬の新たな標的となりうる。L-type amino acid transporter 1(LAT1)は,あらゆる臓器由来のがん細胞で高発現し,多くの必須アミノ酸を細胞内に取込む。LAT1阻害薬によるアミノ酸の取込み阻害は,がん細胞増殖抑制効果,腫瘍増大抑制効果を示す。しかし,個々の必須アミノ酸に着目したLAT1阻害薬の薬理作用の詳細は未解明な点が多い。本研究では,がん細胞における必須アミノ酸の取込み阻害が細胞増殖に与える影響を評価し,さらに細胞内シグナルや遺伝子発現などの変動を網羅的に解析することで,がん細胞の機能低下や応答の分子機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
がん細胞は,活発な細胞増殖を維持するために,正常細胞と比べて多くの栄養素を取込む。そのため,栄養素の取込みを担うトランスポーター(膜輸送タンパク質)は,がんの有効な治療薬の標的になりうる。なかでも,アミノ酸トランスポーターは,がん細胞と正常細胞で発現に違いがあり,創薬ターゲットとして有望である。ヒトでは約60種類のアミノ酸トランスポーターが同定されており,特にL-type amino acid transporter 1 (LAT1; SLC7A5)は,腫瘍選択性が高く,様々な腫瘍組織で発現が上昇している。さらに,LAT1は7種の必須アミノ酸を含む8種の大型中性アミノ酸を主な輸送基質とする。実際に,LAT1の阻害薬は,がん細胞増殖抑制作用および腫瘍増大抑制作用をもたらす。しかし,LAT1の阻害と細胞増殖抑制とを結ぶ分子機構の詳細は不明な点が多い。本研究では,個々のアミノ酸に着目して,LAT1阻害薬の薬理作用の解明を目指す。 第一段階として,アミノ酸の放射性同位体化合物を用いた輸送活性の測定をおこなった。その結果,実際にLAT1阻害薬が,がん細胞への8種すべての輸送基質アミノ酸の取込みを阻害することが示された。またLAT1の阻害が,がん細胞のタンパク質合成を全般的に低下させることを,シグナルタンパク質のリン酸化の検出に加えて,ピューロマイシン標識法(SUnSET)とポリソーム解析により明らかにした。さらに個々のアミノ酸の細胞内量の減少が細胞機能に与える影響についての解析に向けて,特定のアミノ酸を含まない培地の作製方法や血清の透析条件を検討した。実際に,作製した培地で細胞を培養することで,細胞内の特定のアミノ酸量を劇的に減少させることができた。確立した本培養系を用いて,個々のアミノ酸の細胞内量の低下が細胞増殖に与える影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAT1阻害薬が,がん細胞の全輸送基質アミノ酸の取込みを阻害すること,またそれによってタンパク質合成活性の低下をもたらすことを明らかにすることができた。すなわち,アミノ酸取込みの抑制を機序とした抗がん薬の開発においてLAT1が適切な標的であることが確認された。また申請時の計画に従って,特定のアミノ酸の細胞内量を減少させる培養系を確立し,個々のアミノ酸の細胞内量の減少が細胞増殖に与える影響を評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
必須アミノ酸の取込み阻害によるがん細胞の機能低下や応答の分子機構を個々のアミノ酸の機能に着目しながら明らかにする。アミノ酸は,タンパク質や脂質,核酸などの生体高分子合成の材料や,mTORC1系に代表される栄養シグナル因子などとしての複数の機能をもつ。さらに,タンパク質の構成要素となる生体内のアミノ酸は20種類存在し,わずかな化学構造の違いが多様な機能をもたらしている。よって,取込み阻害による影響をひとつひとつ確認していくことは困難である。まずは複数の網羅的解析手法を用いることで多角的に細胞内現象の全体像をとらえ,それぞれの解析結果を比較,統合した上で,生化学的手法,薬理学的手法等を駆使しながら分子機構を解明する。解析においては,本年度確立した細胞内の特定のアミノ酸量を減少させる培養系で細胞を培養することで,アミノ酸の取込み阻害がもたらす細胞内量の減少を模倣する。以上を通して,がん細胞の必須アミノ酸の取込みを阻害するLAT1阻害薬の薬理作用の解明を進める。
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