研究課題/領域番号 |
22KJ2196
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補助金の研究課題番号 |
22J20598 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 丈 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | デバイスシミュレーション / 量子輸送 / トンネルトランジスタ / 2次元物質 / 非平衡グリーン関数法 / 等価モデル |
研究開始時の研究の概要 |
従来広く用いられてきたシリコン電界効果トランジスタ(FET)はそのスイッチング特性向上に理論的限界があり,低電圧・省電力動作化が困難である.この限界を打破するため,2次元材料を用いたトンネルトランジスタ(2D-TFET)が試作されている.2D-TFET実用化に向けては,多数の選択肢の中から,最適な材料や構造をシミュレーションにより見出すことが重要である.本研究では,原子論モデルの計算負荷を大幅に削減する等価モデルを開発し,高効率な2D-TFET量子輸送デバイスシミュレータの開発を行う.
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研究実績の概要 |
本年度の研究成果は,等価モデルを用いたバンド間トンネルシミュレーションにおいて,エネルギー窓幅と精度の関係を明らかにしたことである.高速計算手法である等価モデルでは,狭い輸送エネルギー窓を小さな基底系で正確に記述することにより,計算負荷を大幅に削減する.抽出する輸送エネルギー窓幅を狭くすることで基底サイズを小さくすると,計算負荷をより削減するが,一方で,エネルギー窓幅を狭くしすぎると,計算の精度が低下する.そこで,精度と計算負荷のバランスがとれた適切なエネルギー窓幅を指定することが重要である.本年度の研究では,等価モデルを用いた場合に生じる相対誤差は輸送エネルギー窓幅に対して指数関数的に減少することを明らかにした.具体的には,シリコンやゲルマニウムおよびIII-V属化合物半導体について,ナノワイヤ構造トンネルトランジスタの輸送特性を計算した.この際,強結合近似モデルに基づく非平衡グリーン関数法シミュレーション結果を基準として,輸送エネルギー窓幅をさまざまに変化させて作成した等価モデルに基づく同様の非平衡グリーン関数法シミュレーションの結果の精度を調べた.特に,直接遷移型の半導体にくらべて,間接遷移型の半導体のほうが,十分な計算制度を確保するのに必要な輸送エネルギー窓幅を広く取らなければならないことを明らかにした.以上の結果から,等価モデルを用いてトンネル効果を高速にシミュレーションできると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,2次元等価モデル作製の前段階として,等価モデルのバンド間トンネルシミュレーションへの適用可能性を探ることを目的とした.この目標を達成するために,輸送エネルギー窓幅と計算精度の関係を明らかにする必要があった.そこで,さまざまな材料について,輸送計算精度のエネルギー窓幅依存性を調べた.その結果,等価モデルを用いることで,計算精度を落とすことなく,大幅に計算量を削減したバンド間トンネルのシミュレーションを行えることがわかった.以上のように,当初の目標を達成し,来年度の研究を遂行するために必要な土台を作成できたため,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2次元系へ適応可能な等価モデルの開発を行う.またそれと並行して,開発した等価モデルをテストするために,強束縛近似法と非平衡グリーン関数法によるデバイスシミュレーターの開発も行う.等価モデルを用いた場合と強束縛近似法を用いた場合との結果を比較し,2次元等価モデルを適宜修正していく.この際,はじめは弾道条件を仮定して計算を行う.その後,フォノン散乱や欠陥の効果を取り入れる.散乱過程を取り入れた場合,強束縛近似法を用いたシミュレーションでは,計算負荷が増大する.そのため,OpenMPを用いることで計算の高速化を図る.
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