研究課題/領域番号 |
22KJ2210
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補助金の研究課題番号 |
22J21080 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
沖田 和也 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 拡散方程式理論 / 溶媒和ダイナミクス / エネルギー表示溶液理論 / Smoluchowski-Vlasov方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
不均一溶液系中の分子ダイナミクスは多くの分野において重要な過程の1つであり盛んに研究が行われている.従来のアプローチでは系の不均一性や分子の異方性に対して近似が必要であり,これらをあらわに扱うことは困難である.そこで,本研究では平衡溶液論の1つであり複雑な系の自由エネルギー計算が可能であるエネルギー表示溶液理論を非平衡過程へと拡張する.この新規方法論と分子動力学計算を合わせて用いることで複雑な系のダイナミクスを解明することを目的とする.
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研究実績の概要 |
2022度に定式化を行った新規拡散方程式理論であるエネルギー表示のSmoluchowski-Vlasov方程式(ERSV)を水またはアルコール溶液系における蛍光分子近傍の溶媒和ダイナミクスへと応用し,新規理論に基づいた解析を行った. 脂質膜近傍のような不均一溶液系における分子ダイナミクスは生化学や光化学等の多くの分野において重要である.2022年度はこれらの現象を解析するための理論的基盤を構築することを目的として,平衡溶液理論の一つであるエネルギー表示溶液理論と非平衡統計力学理論の一つである射影演算子法を組み合わせることでエネルギー表示における新規拡散方程式理論(ERSV)を導出した.更に,新規理論を水中の溶媒和ダイナミクスへと応用し,その結果を分子動力学(MD)計算と比較することで新規理論の長時間領域における妥当性を確認した.2023年度はこの新規理論の更なる応用を目指して,脂質膜近傍の溶媒和環境解析において代表的な蛍光分子であるProdanを対象溶質とし,水またはアルコール類を溶媒とする4種類の溶液系に対して新規理論を適用した.その結果,いずれの溶液系においても新規理論は長時間ダイナミクスを記述可能であることが示され,新規理論がこれらの系に対して有効であることが確認された.また,新規理論による長時間ダイナミクスの予測のみならず,新規理論に基づいた系統的な解析も考案した.例えば,新規理論に基けば,ダイナミクスの時間スケールは静的な溶媒和構造に由来する部分と溶媒分子の拡散性に由来する部分とに分けて書くことができる.今回対象とした4つの系については静的な溶媒和構造に由来する部分は共通であることが分かった.よって,溶媒種ごとのダイナミクスの違いは主に溶媒分子の拡散性に由来するものであると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までは新規理論の定式化に注力していたため,適用した系は一種類のみであった.2023年度は新規理論の更なる応用や系統的な解析を目指して水溶液系のみならずアルコール類を溶媒とする新たな溶液系を対象とした解析を行った.その結果,更なる系統的な解析を実現し,新たな知見を得ることができた.既にこれらの結果をまとめており,学術論文として受理済である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度では昨年度に定式化した新規理論を水またはアルコール溶液系における蛍光分子周りの溶媒和ダイナミクスへと応用した.今後は,脂質膜近傍のようなより複雑な系における溶媒和ダイナミクスへと展開を行い,更なる発展を目指す予定である.
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