研究課題/領域番号 |
22KJ2236
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補助金の研究課題番号 |
21J20600 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野村 皇太 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2022年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2021年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 暗黒物質 / ダークマター / ブラックホール / アクシオン / 電磁波 / X線 / 特異点 / エントロピー / 重力波 / 初期宇宙 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙には目に見えない「暗黒物質」が存在していることが分かっているが、その正体は未だに謎である。従来暗黒物質の有力な候補とみなされていた重い新粒子は発見に至っておらず、新たな暗黒物質候補を考える必要性が高まっている。このような中で、近年、非常に軽い質量を持つスカラー場またはベクトル場を暗黒物質とするモデルが観測・理論の両面から注目を集めている。本研究では、軽いスカラー場やベクトル場の暗黒物質が宇宙背景放射や大規模構造などの観測に与えるシグナルを調べ、モデルの検証を行う。さらに、このモデルでの重力波生成量を予測し、将来的な検証につなげる。
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研究実績の概要 |
電磁波・重力波を用いた宇宙精密観測が今後進展することを踏まえ、それを活用した軽量暗黒物質モデルの検証のための理論的予言を行うことが本研究の目的であった。2022年度は、ブラックホール近傍の電磁波観測が近年急速に発展していることを大きな動機として、アクシオン・光子相互作用がブラックホール磁気圏での電磁波伝播に与える影響を研究した。本研究では、超大質量ブラックホールが特徴とする系の巨大さと強い重力により、長い伝播距離にわたって磁場が保たれること、その帰結としてブラックホール磁気圏を伝播するX線やガンマ線がアクシオンに効率的に転換することを明らかにし、その周波数帯においてブラックホール近傍から放たれる光量が最大で25%減少することを示した。この減光率はアクシオン・光子結合定数やアクシオン質量に依存しており、将来の観測でこの減光を観測すればこれらのパラメータを測定することができる。したがって、本研究により、ブラックホール観測を用いたアクシオン暗黒物質探索方法の一つを与えることができたと言える。本研究成果について、論文を執筆して発表した。また、日本物理学会を含む3件の学会・研究会にて口頭発表を行った。 また、当初研究計画にはなかったが、特異点を持たない時空のトポロジーに関する研究や、宇宙論的時空における領域の面積とエントロピーの不等式的関係に関する研究も行うことができて、それらの成果をそれぞれ論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電磁波・重力波を用いた宇宙精密観測を活用して軽量暗黒物質モデルの検証を行うために、軽量暗黒物質による特徴的な観測量を理論的に予言することが本研究の目的であった。2022年度に行った研究では、ブラックホール近傍の電磁波観測を用いて暗黒セクターの粒子を探索できることに注目し、実際にアクシオン・光子相互作用によって電磁波スペクトルがどのように変更されるかを明らかにした。これで既に観測量の予言という当初の目的が達成できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に行った研究では、ブラックホール近傍の電磁波観測にアクシオン・光子相互作用がもたらす影響を評価した。ブラックホールは、重力波観測や影の撮像などによって近年特に観測が発展している対象であるため、2022年度の研究成果を生かし、今後もブラックホール周辺での軽量暗黒物質の振る舞いに注目した研究を行いたい。また、軽量暗黒物質の宇宙論的発展についても引き続き研究対象とし、観測量の予測へ繋げる予定である。
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