研究課題/領域番号 |
22KJ2254
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補助金の研究課題番号 |
22J01063 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山口 祐香 神戸大学, 国際協力研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 在日朝鮮人 / 市民運動 / 知識人 / メディア / 歴史実践 / 韓国・朝鮮 / 歴史認識 / 戦後史 / メディア史 / 雑誌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、雑誌『日本のなかの朝鮮文化』(1969-1981)の言説分析と関係者ネットワークの整理を通じ、日本の戦後市民運動史の新たな側面を明らかにすることを目指す。同誌は、京都の在日朝鮮人実業家らの発案で、関西の著名な知識人の協力により刊行された。70年代は日本の経済成長と国際化が進む一方、韓国との公的な交流は制限され、同誌は日朝関係史に関する数少ないメディアの1つであり、当時の知識人や市民から強く支持された。本研究は、戦後在日朝鮮人による文化運動としての同誌の位置づけを検討すると共に、関連する日本人市民の価値観や歴史認識を分析し、アジアとの関わりをめぐる日本の市民の実践を跡付ける。
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研究実績の概要 |
今年度は、①:博士論文を基にした単著の刊行、②:<古代史ブーム>をめぐる戦後日韓の学術研究・メディア・市民による歴史実践の研究(主に文献調査)、③:②を達成するための韓国での在外研究、という3つの柱を立てて研究を実施した。 ①については、順調に遂行し、新たな調査結果も含めた内容で2024年3月に法律文化 社から単著『「発見」された朝鮮通信使―在日朝鮮人歴史家・辛基秀の歴史実践と戦後日本』を刊行することが出来た。②については、主に文献精読を実施すると共に、本研究課題に関係の深い京都大学人文科学研究所で行った調査で、70年代に同研究所で飯沼二郎により行われた朝鮮史研究会に関する資料および関係者インタビュー(水野直樹氏・飛田雄一氏)を行うことができた。その結果、ベトナム反戦運動や韓国の民主化運動との連帯に取り組んでいた飯沼を中心に、人文研では初めての「朝鮮」をテーマにした研究会が開催され、そこには関西の在日朝鮮人および日本人市民が多く参加していた状況が分かった。市民運動と研究が緊密に結びついていた1970年代日本において、京都を軸とする関西のローカルな歴史実践を跡付ける事例として興味深く、今後論文化していく見通しを得た。更に、③韓国・ソウル大学日本研究所に客員研究員として2ヶ月間滞在し、韓国における古代史・日朝関係史研究の動向に関する資料収集や、韓国の研究者との交流を行った。以上の研究活動から得られた資料および着想を基に、国内の学会や研究会(同志社大学MICCS・現代韓国朝鮮学会・東京大学韓国研究センター)で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの研究活動で、当初予定していた高麗美術館の資料が使えないことが判明したが、当初予定した雑誌『日本のなかの朝鮮文化』を中心とする分析のみならず、戦後京都という時空間の把握と、70年代日本人の韓国・朝鮮認識の観点から検討していくことが可能であるという着想を得ていた。その手応えに従い、2023年度は京都大学人文科学研究所での調査をはじめ、1970年代関西の知識人と市民運動が交錯する観点から本研究課題を深めることができた。ただし、並行していた単著の刊行作業が想像以上に労力を必要としたため、予定していた論文の執筆・投稿が出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、70年代日本の学術研究およびメディア空間における韓国・朝鮮観の変遷に焦点を絞り、雑誌内で展開された議論の詳細を分析しつつ、同誌の意義について明らかにし、滞っていた論文執筆と投稿を行う予定である。具体的には、①『日本のなかの朝鮮文化』を手がかりとした日本人市民の「韓国・朝鮮観」の言説分析、②戦後日本の朝鮮史研究史上における日本の知識人(上田正昭の位置づけ、③京都大学人文科学研究所の「韓国・朝鮮」研究の3つを軸に研究を進め、論文執筆を行う。
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