研究課題/領域番号 |
22KJ2311
|
補助金の研究課題番号 |
22J23243 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中川 凌 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | バイオ燃料電池 / メディエーター / バイオセンサ / 酸化グラフェン |
研究開始時の研究の概要 |
酵素反応を利用するバイオ燃料電池において,電子移動を仲介する分子(メディエーター)の開発指針は,十分に確立されているとはいえない。本研究では,メディエーター設計およびそれを担持した電極設計の指針を明らかとする。本研究を達成すべく,官能基の導入によるメディエーターの酸化還元電位の最適化,メディエーターの固定化位置の調整,酵素やメディーターの固定化量の増大を達成し,次世代の生体内電気デバイスとして使用可能な高出力・長寿命のバイオ燃料電池開発を目的とする。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,酵素型バイオ燃料電池におけるメディエーター分子設計と電極設計の指針を明らかとすることである. 分子設計においては,これまでの私たちの研究で,キノリン構造を由来とする含窒素型メディエーター分子を報告している.2023年度は,メディエーター分子への機能付与や電極あるいは酵素への固定化を目指して,前年度と同様に分子骨格に様々な官能基の導入を試みた.その結果,合成に成功した分子の一部が,対象とする酵素のメディエーターとしての働きを示した.これらの分子に対して,酸化還元電位・水溶性・連続測定に対する安定性・燃料のグルコースへの応答性などの特性を評価した.しかしながら,官能化した誘導体はいずれもグルコースへの応答性の低下がみられた.今後は,担持量の増加や長期間使用への安定性を目指し,分子設計および合成を行う. また,今年度は,これまでの小分子型のメディエーターに加えて,担持量増加を目的に高分子型のメディエーターの開発を試みた.合成の結果,重合度および収率が低いものの前駆体と思われる高分子が得られた.今後はメディエーターへの官能化および合成条件の最適化を目指す. 本研究では計算科学を用いた実験の効率化も行っており,研究コスト(実験時間および実験費用)の削減を目指している.分子の電子状態を化学計算によって導出し比較することで,求核性および反応性を予測した.これによって,反応設計の効率化と合成反応への理解を深めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においては,メディエーター分子の合成と特性評価が中心課題となった.メディエーター分子設計においては,キノリン骨格を基盤とした含窒素型メディエーター分子の合成に成功し,一部で酵素に対する活性を確認できた点が大きな進展である. 一方で,官能基導入による誘導体のグルコース応答性低下が課題となっており,分子設計の最適化が必要である.高分子型メディエーターの開発も進められ,合成の結果,低い重合度と収率ながらも前駆体と思われる高分子を得ることができた.今後の官能基導入と合成条件の最適化が重要なステップとなる. 計算化学的アプローチでは,分子の電子状態予測により反応設計の効率化と理解が進んだ. 以上のように,メディエーター分子設計と電極設計に関する知見が着実に蓄積されており,おおむね順調に研究が進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,メディエーター分子のグルコース応答性向上を目指し,分子設計と合成条件の最適化を行う. 特に,官能基導入による応答性低下の原因解明と対策が重要である.高分子型メディエーターについては,前駆体の重合度と収率の向上を図りつつ,官能基導入による機能付与を検討する. 電極設計に関しては,メディエーター分子や酵素の固定化条件の確立を目指す. 計算化学的アプローチでは,反応機構の理解を深めながら,合成条件や分子設計の指針をさらに明確化する. 以上の取り組みを通じて,酵素型バイオ燃料電池の高性能化と実用化に向けた設計指針の確立を目指す.
|