研究課題/領域番号 |
22KJ2318
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補助金の研究課題番号 |
21J22835 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
橋本 拓夢 広島大学, 人間社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2021年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | タイ / 比較教育 / 教育格差 / 学習機会保障 / 教育福祉 / 多職種・多機関連携 / 教育革新地区 / 協働ガバナンス / 比較教育学 / 教育制度 / 地方教育行政 / 教育ガバナンス / 教育参加 / 協働 / 地方自治 |
研究開始時の研究の概要 |
タイでは、教育省とその地方出先機関を中心とする国家セクターが独占的な教育統治主体であると理解されてきた。ところが、法案審議過程にある「新国家教育法」を根拠とする「教育総会」構想は、地域の多様なアクターがネットワーク化して教育課題を発見、解決する参加・協働型の教育ガバナンスの具体的施策と考えられる。このことは、タイ教育行政史において注目に値する改革動向である。 本研究は、こうしたタイ地方教育ガバナンス改革の構造と機能について、各地の事例を踏まえて考究する。また、政策・法制的な実態とその運用実態の両面から今次改革の意義と課題を析出することを企図している。
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研究実績の概要 |
最終年度である令和5年度は、以下で述べる3点の研究を実施した。 第1に、教育省出先機関である県教育事務局が官民の関係組織/人のネットワーク化を進める事例を分析した。その結果、官以外のアクターを教育政策領域の会議体に参入させることに加えて、政策領域ごとで「断片化」している行政機構をいかに「統合」的な体制へと編成し直すのかが課題とされていることが明らかになった。 第2に、1点目で述べた多職種・多機関連携型のネットワークによる「教育制度外」(いずれの教育機関にも就学していない状態)の子ども若者支援の実態分析である。具体的には、社会福祉の所轄官庁や内務行政の関連機関、そして様々な専門性を有する識者が教育行政機関と連携することで、子ども若者の輻輳した困難に対応している。これを各県で促進する事業として、「公正な教育のための基金」(EEF)のArea Based Education事業が位置づくことが分かった。 第3に、「教育制度内」(学校へ就学している状態)の子ども若者に対する学習機会の質的向上を企図した「教育革新地区」の制度実態である。これは県単位での申請により指定され、県内のパイロット校(特例校)における国家基準の特例措置が制度化されている。パイロット校では教育内容の弾力化に加え、小規模校や山間部ないし島嶼部にある学校は補助金の傾斜配分を受けることが明らかになった。 こうして本研究は、「2017年憲法」下のタイ地方教育制度改革において「協働ガバナンス」の発想が導入されつつあるものの、既存の権力作用を軸とした国家セクター主導の教育行政機構は「協働の調整者」として温存されていることを明らかにした。そうした基本的構造のもとで、画一的な行政機構に徐々に柔軟性が実装されはじめ、従前の体制よりもタイ各地の多様な実態に即した子ども若者の学習機会保障=教育制度のデザインを可能にしてきたと考えられる。
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