研究課題
特別研究員奨励費
本研究ではoptineurin(OPTN)変異に関連する家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序の解明を目的とする。OPTN変異は炎症シグナルであるNF-κB 経路の抑制不全等、様々なメカニズムで神経細胞死を惹起することが報告されている。OPTNはモーター蛋白質であるdyneinとも結合することから、申請者は変異型OPTNが軸索輸送障害をきたし、軸索変性および神経細胞死を引き起こす可能性を考えた。本研究ではOPTN変異を有する患者由来のiPS細胞から分化させた運動ニューロンを用いて、マイトファジー障害および生存シグナル低下との関連に着目し、軸索変性の機序解明を行う。
令和5年度は①optineurinとdyneinの相互作用の評価、②iPS細胞から分化させたmotor neuronの軸索における逆行性輸送の評価、③iPS細胞から分化させたmotor neuronの神経突起長測定の3点の解析を行った。まず①に関して、免疫沈降法を用いてoptineurinとdyneinの相互作用評価を行った。その結果、optineurinがdyneinの特定のコンポーネント(詳細非公開)と相互作用することを示唆する結果を得た。次に②について、コントロールおよびoptineurin (OPTN)変異(E478G、Q398*)を有する患者由来のiPS細胞から分化させたmotor neuronを細胞体と軸索を分離できる形態観察用チャンバー内で培養し、軸索の逆行性輸送の評価を行った。Live cell imagingおよびPFA固定後の細胞のいずれでも観察可能なMT-1ミトコンドリア膜電位検出キットを使用し、共焦点レーザー顕微鏡Stellaris 5を用いてミトコンドリアの逆行性輸送をリアルタイムで観察・記録することに成功し、逆行性輸送速度を測定した。また、蛍光プローブで標識したBDNFの逆行性軸索輸送の観察を行った。③について、コントロールおよびOPTN変異(E478G、Q398*)を有する患者由来のiPS細胞から分化させたmotor neuronの神経突起長をOpera Phenixシステムを用いて測定した。本研究を通してOPTN変異によって発症する家族性ALSの病態解明に有用な疾患モデルの樹立を行うことができた。現在は上記の観察結果より、変異型optineurinタンパク質が逆行性軸索輸送や神経突起伸長に及ぼす影響を解析している。
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Brain Communications
巻: 5 号: 6 ページ: 281-281
10.1093/braincomms/fcad281