研究課題/領域番号 |
22KJ2337
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補助金の研究課題番号 |
22J20442 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山名 啓太 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | BNCT / DDS / 抗体 / ハイブリッド材料 / ナノマテリアル / ドラッグデリバリーシステム |
研究開始時の研究の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)はホウ素原子と熱中性子線の間で生じる核反応を利用する侵襲性の極めて低いがん治療法である。本治療法の成 否には、腫瘍組織への効率的かつ選択的なホウ素薬剤の送達が鍵となる。しかし、臨床的に使用されるホウ素薬剤には、腫瘍集積性および選択 性など送達上の課題が指摘されている。本研究では、疎水性のホウ素薬剤を会合因子とする自己組織化ナノゲルを開発し、腫瘍への効果的なホ ウ素送達を実現させる。また、ナノゲルのもつ薬剤複合化能を利用して、ナノゲルとタンパク質医薬品から無機ナノ材料まで幅広い機能をもつ 材料との複合化を行い、BNCTのための新たな治療薬の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度では多糖へ疎水性ホウ素薬剤であるL-BPAを結合させた化合物を合成し、水中にてナノゲルを形成することを確認した。さらに作製したナノゲルが免疫チェックポイント阻害剤であるPD-1抗体を内部へ複合化できることを明らかとした。本年度では、まずナノゲルのBNCT用薬剤としての治療効果を担がんマウスを利用した前臨床試験により評価した。前年度の体内動態評価により、ナノゲル投与から24時間後に腫瘍へのホウ素集積量が極大となることが明らかとなったため、ナノゲル投与から24時間後に、京都大学研究用原子炉にて中性子照射を行い、腫瘍成長抑制効果を評価した。ナノゲルを投与したマウスでは中性子照射により、腫瘍成長を効果的に阻害することができ、その活性は臨床薬であるL-BPA/fructose錯体を凌駕するものであった。さらにナノゲルとPD-1抗体を複合化したハイブリッドナノゲルを作製し、BNCTおよび免疫療法との併用療法に基づく転移がんに対する治療効果を検討した。両足にがんを移植した転移がんモデルマウスを作成し、中性子照射によるハイブリッドナノゲルの治療効果を検討した。その結果、ナノゲルとPD-1抗体を共送達することにより、ナノゲルのみやナノゲルとPD-1抗体を別々に投与した条件と比較して原発巣における治療効果の向上が見られ、さらに転移巣においては、多くのマウスにおいてがんの縮退が見られた。本成果については特許の申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までに行った基礎的な物性やin vitroおよびin vivoにおける特性評価から得られた知見から、当初の目的である腫瘍へ選択的にホウ素原子および薬剤の共送達が可能なナノプラットフォームの構築に成功している。それらの検討をもとに、本年度では中性子線照射を行うことで、BNCTに基づく効率的な腫瘍成長抑制効果を実現しえ、その活性は臨床薬であるL-BPA/fructose錯体を凌駕するものであり、本システムのBNCT用薬剤としての有効性を示すことができた。さらに、免疫チェックポイント阻害剤であるPD-1抗体を組み合わせたハイブリッドナノゲルにおいては、従来治療が困難とされている転移がんに対する有効な結果を得ることができ、当初の目的である従来のBNCTにとどまらない新たながん治療用薬剤の開発に成功している。得られた成果の一部については特許出願による権利化(1件)やSCI論文化(1件)と順調に成果をまとめることができているものと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、転移がんへの治療効果に関するメカニズムを評価するため、関連タンパク質の放出量、フローサイトメトリーを用いた免疫細胞の活性化度から明らかとする。さらには、ナノゲルを構成する多糖の骨格を直鎖、環状あるいはデンドリマーへと変更し、多糖のトポロジーの違いがタンパク質との相互作用、あるいは治療効果へ与える影響について検討する。また、2024年度は最終年度であるため、上記成果の論文化を完了させることに注力し進めていく予定である。
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