研究課題/領域番号 |
22KJ2342
|
補助金の研究課題番号 |
22J13919 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
向田 眞志保 山口大学, 大学院創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 画像処理 / コントラスト強調 / エッジ強調 / 暗視アルゴリズム |
研究開始時の研究の概要 |
夜間の屋外や暗い室内などで撮影された写真や動画は,視認性が低い.その視認性の低さは画像認識や解析を困難にする.暗い映像の視認性を高くするコントラスト強調法が提案されているが,ノイズの増幅や過強調を引き起こす.また,明度にのみ着目するため不自然な色が復元されるといった問題がある.一方,夜行性昆虫は数百万年もの昔から,暗闇や薄明かりの環境において,細かい動きやさらには色やパターンまでも識別する能力を磨き上げてきた.本研究では夜行性昆虫の視覚神経系の機能を理解し画像処理アルゴリズムに応用することで,暗い環境で撮影された映像の視認性・明視性を劇的に向上させる.
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は夜行性昆虫の視覚神経系の機能に基づき,暗い環境で撮影された映像の視認性・明視性を劇的に向上させる暗視アルゴリズムの開発である.夜行性昆虫の暗視機能には,適応的な信号強調,エッジ強調,ノイズ抑制がある.これらの機能を踏まえて,適応的な信号強調処理として画素の値に応じて画像の明るさを変化させるアルゴリズムを新たに開発した.このアルゴリズムは色相保存戦略を取り入れた暗視アルゴリズムに応用した.色相保存戦略を取り入れた暗視アルゴリズムにおいては,植田らが提案したRGB色空間の等色相平面を用いた.RGB色空間の等色相平面上で適応的な信号強調処理を行うことで,入力画像の色合いを保ちつつ画像の視認性を劇的に改善させることに成功した.従来の暗視アルゴリズムは深層学習が応用されており,高性能なハードウェア(グラフィックボード)を必要とする.今回開発したアルゴリズムは点処理をベースに構築し,高性能なハードウェアを必要としない.さらに,視覚的および数値的な画質の評価も従来の暗視アルゴリズムと比較して良好な結果を得ており,開発したアルゴリズムの有効性が確認できた.これらの成果は国際学会において口頭で発表を行った. 夜行性昆虫の暗視機能の一つであるエッジ強調については,コントラストとエッジを同時に強調する田中らのS字関数を用いた多重スケール画像強調法を採用した.また,RGB色空間の等色相平面上でエッジ強調処理を実現するために,色域問題に着目しその改善を行った.この成果は国内学会において口頭で発表を行った.また,ノイズ抑制については明るさに応じて画像の平滑化度合いを変えるアルゴリズムを新たに開発した.適応的な信号強調処理,エッジ強調処理,ノイズ抑制処理,これらすべてを暗視アルゴリズムに応用した.この研究成果は国内学会において口頭で発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は,夜行性昆虫の暗視機能に関する文献調査および,色相保存戦略を取り入れた暗視アルゴリズムの開発であった.文献調査を踏まえ,夜行性昆虫の暗視機能に関わる新たなアルゴリズムを開発した.具体的には適応的な信号強調処理,エッジ強調処理,ノイズ抑制処理である.適応的な信号強調処理については色相保存戦略を取り入れた暗視アルゴリズムに応用し,従来の暗視アルゴリズムと比較することでその有効性を確認した.エッジ強調処理やノイズ抑制処理については暗視アルゴリズムに応用することができたが,色相保存戦略を取り入れていない.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,エッジ強調処理とノイズ抑制処理をRGB色空間の等色相平面上で実現させること,および低計算量化である.エッジ強調処理とノイズ抑制処理ではフィルタ処理を必要とし,この処理が計算速度を低下させている.今後は縦列分解による高速な最大値,最小値演算等によってフィルタ処理を近似計算するアルゴリズムを開発する.また,開発したアルゴリズムを映像処理向けに拡張する.アルゴリズムの実応用性を検証するため,多数の映像を用いた実験を行いたいと考えている.
|