研究課題/領域番号 |
22KJ2350
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補助金の研究課題番号 |
20J14993 (2020-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2020-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 早稲田大学 (2023) 徳島大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
小川 麻衣子 (2022-2023) 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
坂井 麻衣子 (2020-2021) 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部 (医学域), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-06-29 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2023年度: 934千円 (直接経費: 719千円、間接経費: 215千円)
2021年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2020年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | エンドサイトーシス-リソソーム分解経路 / mTORC2 / GATA3 / ポリフェノール / マクロファージ / イソラムネチン |
研究開始時の研究の概要 |
リソソームは多様な生体分子 (糖・脂質・タンパク質等) の分解を担う細胞小器官であり、その機能不全は様々な疾病の発症要因となりうる。マクロファージは細菌や死細胞の貪食・除去を担う免疫細胞であり、この細胞におけるリソソーム活性を維持することは特に重要である。本研究は、マクロファージのリソソーム活性制御機構を、細胞内の栄養応答シグナルであるmTORC2 に着目して詳細に解析する。mTORC2 は、糖・脂質・ビタミン類により活性制御を受けることが知られているため、本研究は食によるリソソーム活性調節を目指す上での重要な知見となることが期待される。
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研究実績の概要 |
エンドサイトーシス-リソソーム分解経路は、細胞外の異常分子を除去する重要な機構である。これまでの研究により、食品由来ポリフェノール化合物であるイソラムネチンが、マクロファージ様細胞株において本分解経路を亢進することを明らかにしている。また、イソラムネチンの作用機序を解析したところ、本分解経路を制御する新規な機構として mTORC2-GATA3 経路が明らかとなっている。 エンドサイトーシス-リソソーム分解経路は、① 細胞外からの基質の取り込み、② リソソームへの基質の輸送、③ リソソームにおける基質の分解という複数のステップを経て進行する。そこで、イソラムネチンがいずれかのステップに作用すると予想し、それぞれ検討を行った。その結果、イソラムネチンを処理した細胞において、① 細胞外からの基質の取り込み、③ リソソームにおける基質の分解には変化が認められなかった一方で、初期エンドソームおよび後期エンドソームの顕著な増加が認められ、イソラムネチンは② リソソームへの基質の輸送ステップを亢進することが示唆された。 これまで、本分解経路を亢進させる戦略として、細胞外からの基質の取り込みやリソソーム機能をターゲットとした研究が多く行われてきたが、本研究成果は、mTORC2-GATA3 経路によるエンドソームの輸送制御が本分解経路の亢進に対する有用なターゲットとなり得ること示唆しており、食を介した新たな疾病予防戦略の提案に繋がるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画している研究計画に関しては、おおむね順調に進展している。 前年度までに、食品由来ポリフェノール化合物であるイソラムネチンが J774.1 マクロファージ様細胞においてエンドサイトーシス-リソソーム分解経路を活性化させること、その制御機構に mTORC2-GATA3経路が重要であることを見出していた。本分解経路は、① 細胞外からの基質の取り込み、② リソソームへの基質の輸送、③ リソソームにおける基質の分解という複数のステップを経て進行するが、イソラムネチンがどのステップを制御するか不明であった。そこで、令和3年度は、イソラムネチンの作用点を詳細に解析することを目的とし研究を進めた。 まず、リソソームの分解活性に与える影響に関して、蛍光プローブ (Lysosomal-METRIQ) を用いて評価したところ、イソラムネチン処理による変動は認められなかった。また、細胞外からの基質の取り込みに関して、蛍光デキストランを用いて検討したがイソラムネチン処理による影響は認められなかった。一方で、蛍光免疫染色を用いた解析を行った結果、イソラムネチンを処理した細胞において初期エンドソームおよび後期エンドソームの有意な増加が認められた。この結果より、イソラムネチンは細胞内におけるエンドソームの形成過程を亢進し、分解基質のリソソームへの輸送を活性化させることが明らかとなった。 これまで、マクロファージによる細胞外分子の除去作用を亢進させる戦略として、分解基質の細胞内への取り込み過程やリソソーム機能が標的とされてきたが、本成果により、エンドソームの形成や輸送が有用なターゲットとなる可能性が新たに見出された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果は、2021年2月に学術誌へ投稿したが受理には至らなかった。そこで、令和3年度は、主に2点の解析を追加で計画し実験を進めている。1点目の解析は、“現在までの進捗状況” に述べた内容であり、すでに上述の成果が得られている。今後は、以下に示した2点目の解析を中心に検証する予定である。 本研究では、J774.1 マクロファージ様細胞株を用いた解析により、エンドサイトーシス-リソソーム分解経路の制御機構として mTORC2-GATA3経路を新規に同定した。まずは、本制御機構が細胞株に限らず生体由来のマクロファージにおいても保存されているか、マウスから採取した腹腔マクロファージを用いて検討する。また、本制御機構がマクロファージ以外の細胞種においても共通した機構であるか否かも興味深い。そこで、肝臓や腎臓などの組織由来の細胞に対して mTORC2 阻害剤を処理し、GATA3 の核内移行やエンドサイトーシス-リソソーム分解経路が亢進するか検証を行う。
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