研究課題
特別研究員奨励費
フレアアップ期の火成活動は、大陸地殻を成長させる一大イベントである。フレアアップ期の地殻の応答解析には、地殻中に生じたマグマの組成の理解が必要不可欠である。これまで、マグマ組成の検討には全岩化学組成が用いられてきたが、固結時にメルトや揮発性成分が消失することで、”正確な”マグマ組成を知ることは困難であった。本研究では、花崗岩質マグマだまりから消失したメルトや揮発性成分の組成について検討を行うため、ジルコンメルト包有物に注目し、ジルコン形成時にトラップされたメルト組成や揮発性成分の組成分析手法の開発および西南日本白亜紀花崗岩類の岩石学研究に応用を目的としている。
本研究では,西南日本に分布する白亜紀花崗岩類について(A)花崗岩の岩石学的研究と花崗岩中のジルコンメルト包有物の(B)研究手法の開発を総合した花崗岩成因研究を遂行した。(A)花崗岩の岩石学的研究では,愛媛県高縄半島およびその島嶼部である四阪島梶島の深成岩について,記載岩石学研究・地球化学研究・年代学研究・同位体岩石学研究を実施した。愛媛県梶島では,ジルコンU-Pb年代測定法を用いて斑れい岩および花崗岩の年代学的特徴を明らかにした(Shimooka et al., 2023, JMPS)。また,記載岩石学研究において,花崗岩中に部分溶融組織を発見し,組織観察および地球化学研究に基づき花崗岩質地殻の部分溶融によるより分化した組成を示す花崗岩質マグマの生成プロセスを明らかにした(下岡ほか,2024,岩石鉱物科学)。この花崗岩質マグマ生成プロセスの解明は,これまで同位体岩石学や年代学によって導かれてきた地殻の分化過程を記載岩石学的に明らかにした初の試みであった。ジルコンメルト包有物の研究手法開発では,ピストンシリンダー型高温高圧発生装置を用いたジルコン中のメルト包有物(多相包有物)の均質化手法を開発すると共に,得られた手法を西南日本外帯に分布する珪長質岩について応用し,花崗岩固結時の温度圧力条件の制約を試みた(Taniwaki, Shimooka et al., 2023)。また,メルト包有物測定時のガラススタンダードとして,長野県下諏訪に産する黒曜石について化学組成分析を実施した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 1件)
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