研究課題/領域番号 |
22KJ2364
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補助金の研究課題番号 |
22J00430 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
樋口 健太 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 一般化古典軌道 / 量子共鳴 / 散乱問題 / 半古典極限 / 断熱定理 / 量子ウォーク / グラフ理論 / 確率振幅 / 局所散乱行列 / 共鳴トンネル現象 |
研究開始時の研究の概要 |
行列シュレディンガー作用素の量子共鳴の漸近的な分布と、古典力学を模式的に表したグラフの性質との関係を明らかにする。量子共鳴の分布は量子的粒子の崩壊の早さを示しており、半古典極限(プランク定数に対し粒子の質量が十分大きいことによる近似)においては古典的粒子の運動が束縛されているか否かを反映する。複数のシュレディンガー作用素の「連立方程式」を考えると、対応する複数の古典力学はグラフによって表現することができる。本研究では、半古典極限において量子共鳴の分布がこのグラフの性質をどのように反映するのかを調べる。
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研究実績の概要 |
1) 行列シュレディンガー作用素の量子共鳴:2つのシュレディンガー作用素を対角成分とする行列値の作用素を扱った.特に,互いに対応する古典軌道がちょうど転回点で接触するような場合にその接触における”遷移確率振幅”を求め,量子共鳴の半古典漸近分布を得た.転回点での接触は,それより少し高いエネルギー準位では半分の接触次数の二つの交差が現れ,少し低いエネルギー準位では接触なしとなるような臨界的な状況に対応する.この位相的な変化の影響により遷移確率振幅も劇的に変化する.接触が二次関数的な場合に,Airy関数がこの変化を記述することが先行研究で示されていた.今回は接触が高次の場合に,Airy関数のある一般化によってこの現象が記述されることを明らかにした.
2)断熱遷移問題:二つのエネルギー準位がゆっくりと近づいてやがて離れていく過程で状態のエネルギーが一方から他方へと遷移する確率は,時間スケールを十分大きくする極限において十分小さくなると考えられている.よく知られたLandau-Zenerの公式は,エネルギー準位の最接近が1次関数的なモデルにおいて,最も接近した際の距離と時間スケールの二乗との比によって断熱的か否かが変わることを示している.私は接近が高次関数的な場合を調べた.接近の次数をmとすると,距離のm乗と時間スケールの(m+1)乗の比が重要になることがわかった.Landau-Zenerのモデルと同様となるのはmが奇数の場合に限られることも明らかとなった.
3)量子ウォークにおける量子共鳴の摂動問題:シュレディンガー作用素において,量子共鳴の解析を固有値の解析へと帰着する複素伸張の方法の有用性はよく知られている.この類似物として,量子ウォークに複素平行移動の方法を導入した.これを用いて,閉鎖系の量子ウォークに摂動を加えた時に,連続的に量子共鳴へと変化し得ることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」において報告した研究成果を得る過程において複数の手法を確立することができた.本研究課題の目標達成へ向けて,これらの手法は重要な役割を果たすと考える.具体的には,以下のようなものが挙げられる.
1)古典軌道の交差の幾何に応じた具体的な遷移確率振幅を得た:行列シュレディンガー作用素とグラフ上の量子ウォークを結びつける際に,古典軌道の交差はグラフの頂点におけるコイン作用素と対応する.従って,得られた確率振幅は量子ウォークにおいてどのようなコイン作用素を設定することが適切であるかを示すものとなる.
2) 量子ウォークの量子共鳴を漸近的に解析する手法を得た:行列シュレディンガー作用素に対応するグラフ上の量子ウォークが得られたときに,量子共鳴がグラフの幾何をどのように反映するかを議論したい.その際に,このような手法は有効となり得る.
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今後の研究の推進方策 |
1)擬微分作用素への一般化:これまでの研究では,具体的な行列値の微分作用素について交差点における遷移確率振幅を計算してきた.現在は一般の行列値シンボルをもつ擬微分作用素の場合への一般化を進めている.共同研究として取り組んでいる他,海外の研究者とも研究連絡をとって進めている. 2)時間発展問題との対応:上記の共同研究では時間発展の問題も扱っており,定常問題との関係や,遷移確率振幅の相違を明らかにしようとしている.グラフ上の量子ウォークでは,時間発展の極限によって定常状態が表示できることが解析における強力な手段となっている.類似のことが擬微分作用素について成立するか否かを明らかにしたい. 3)多次元空間への一般化:考える空間の次元が上がると,古典軌道やその交差の幾何は大きく多様性を増す.まずはこれまでに扱ったものに対応する多次元のモデルを特定して解析を進めた上で,多次元に特有の幾何学的特徴を持ったモデルの解析へと進めたい. 4)有向グラフ上の量子ウォーク:行列シュレディンガー作用素に対応する一般化古典軌道のなすグラフは,先行研究で広く扱われている対称辺の量子ウォークの枠組みには当てはまらない.このようなグラフ上の量子ウォークに対する定常散乱問題の定式化をすることで,対応関係を厳密に記述する下地を用意する.
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