研究課題/領域番号 |
22KJ2373
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補助金の研究課題番号 |
21J00524 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小川 真治 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 異常磁気能率 / J-PARC E34実験 / 陽電子飛跡検出器 / シリコンストリップセンサー |
研究開始時の研究の概要 |
μ粒子の異常磁気能率の実測値が、理論予測から大きく逸脱していることが、米国での先行実験およびその追加実験によって報告された。これは素粒子物理学の標準模型を超える新物理探索の手がかりとなる。しかしながら、どちらの実験も魔法運動量のμ粒子を使用するという同じ手法に基づいており、検証実験が求められている。そのため、日本において指向性の強いμ粒子ビームを用いた新手法による測定実験を計画している。 本研究では、この実験に必要なコンパクトかつ高精細な陽電子飛跡検出器の研究開発を行う。陽電子の通過位置を190umの精度で測ることのできるシリコンセンサーを多数並べることで、陽電子の飛跡を測定できる。
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研究実績の概要 |
標準模型を超えた物理を探索するため、μ粒子異常磁気能率の超精密測定を目指している。先行実験においては、理論予測から4シグマ以上もの逸脱が報告されて いるため、独立な手法による検証が強く求められている。J-PARC E34実験計画では指向性の強いμ粒子ビームとコンパクトな蓄積磁石・陽電子飛跡検出器を用い る新しい手法を採用することで、先行実験の検証を目指している。 本研究ではそのために必要となる陽電子検出器の開発を行なっている。21年度に行なった接着手法の研究開発および検出器製作環境の整備を基にして、22年度はその最小構成要素であるクォーターベーンの試作機を製作した。クォーターベーンは約10種類もの部材を張り合わせて構成されるが、接着剤の選定・位置合わせ用の治具の製作・試験・修正を各組み立て工程ごとに実施した。 クォーターベーン試作機を組み合わせて製作する予定のベーン試作機の準備として、骨組みとなるベーンベースも試作した。厚み1mm程度で十分薄く、長さ1m程度と大型にでき、物質量が低く、電気的に絶縁で、十分な剛性を持ち、大きな開口率でも平面度が出せる素材としてG10を採用した。試作一号機ではある程度の反りが見られているものの、23年度からのベーン試作にて改良が必要かを判断する予定である。 センサーをフレームに接着する工程は、1um程度と挑戦的な精度での位置合わせが要求されるため重点的に検討を行った。要求精度実現に向けて、フレームの素材・設計の再検討・接着治具の改良を進めてきた。現時点では製作後の安定性も含めて3um程度の精度に到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、年度内にクォーターベーンの試作機を組み上げることができたが、製作工程において幾つかの問題点が見つかっている。それらの対処は23年度に積み残すこととなった。 その一方で、23年度に向けてベーンベースの試作や検出器構造の検討が進んでいるため、全体としては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
22年度のクォーターベーン試作で明らかとなった製作工程上の課題について対処する。たとえばセンサをフレームに接着する工程では、既存の治具では精度よく位置決めができる一方で、作業手順が複雑で時間がかかるため量産には向かないことが明らかとなった。これまでの研究開発での知見を踏まえて調整しろを必要最低限に絞ることで、同程度の位置決め精度が実現できるような治具の製作を目指す。 クォーターベーンの位置を精密に調整しながらベーンベースに接着し、ベーンの試作を行う。高エネ研の技官と協力しながら、必要な治具の設計・試験を行いこれを実現する。 本検出器は真空中で動作するため、電気部品の発熱を冷却する機構を組み込んである。作成済みのクォーターベーン試作機を用いて冷却性能が十分かどうかの試験を実施する。 実験期間中のセンサ位置合わせの手法についても検討する。本実験ではμ粒子電気双極子能率の精密探索のためセンサ位置に関して、1umの精度で理解し続けなければならないという厳しい要求がある。他実験の同種の検出器では10um程度の精度であり、これは挑戦的な目標精度である 。検出器の組み立て精度のみではこの要求を満たせないため、干渉計を用いた測長・陽電子飛跡を用いた位置合わせなど複数の手法を組み合わせる必要がある。シミュレーションなどを活用してどのように組み合わせるのが最適か検討をすすめる。
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