研究課題/領域番号 |
22KJ2394
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補助金の研究課題番号 |
21J21744 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辻 汰朗 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | アミノ酸 / 金属触媒 / 触媒反応 / 有機化学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ペプチド医薬品の注目度が高まる中、非天然型α-アミノ酸の新たな利用法の開発を目指すものである。非天然型α-アミノ酸は、脂溶性の増加、構造の安定化、ペプチダーゼ耐性の増加といった性質を有しており、合成法の確立が盛んに行われている。私は、非天然α-アミノ酸のアミンを足掛かりにし、従来法では変換困難な新たな官能基を持つ化合物へと変換する手法を確立することを目標にしている。さらにペプチド医薬品に合成したアミノ酸誘導体を組み込むことによる生理活性・物性等の機能評価を行い、本研究が医薬、材料科学等の分野に貢献することを示す。
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研究実績の概要 |
生体内や天然に広く存在しているペプチドやタンパク質はα-アミノ酸を構成要素とする主要な化合物であり、近年、従来の低分子薬や高分子薬に次ぐ、新たな医薬品としてペプチド医薬品が注目されている。特にα、α-ジ置換α-アミノ酸といった立体障害の大きい非天然α-アミノ酸を有するペプチドは脂溶性の増加や構造の安定化、ペプチダーゼ耐性の増加といった性質を有していることから、非天然型α-アミノ酸の合成法の開発はこれまで盛んに行われてきた。しかし、これまで報告されている合成法は、カップリングパートナーが小さな立体障害の求電子剤に限られ、また事前にアミノ酸を活性化した基質を用いる必要があり、環境調和性に難点があった。本研究は、事前活性化した基質を用いずに、触媒によって系中でアミノ酸の活性化を行い、求核剤との脱水素的不斉カップリング反応の開発を目指した。 本年度は、はじめに前年度で見つけた新たな反応系の不斉反応への検討を行った。種々の不斉配位子を検討したが、現状、不斉が発現する系を見つけることは達成できていない。しかし、本反応を研究している際に、アミノ酸のアミンを足掛かりにした新たな変換反応を見つけることに成功した。さらに詳細な条件探索を行った結果、室温で10分と非常に温和で速い条件を見出すことに成功した。本反応は、これまで私たちの研究室で合成した立体が非常に大きいアミノ酸から、様々なユニークな官能基に変換できる可能性があり、従来法では困難なアミノ酸の変換方法の開発の第一歩を踏み出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、アミノ酸の触媒による系中活性化を経由した脱水素的不斉カップリング反応の開発の研究に関して進捗状況を報告する。前年度はラセミではあるが、事前活性化されていないアミノ酸を原料に、高収率で進行する脱水素的カップリング反応を見出していた。本年度は、この反応系の不斉反応への検討を行った。種々の不斉配位子を検討したが、現状、不斉が発現する系を見つけることは達成できていない。また、本反応の適用の拡充のため、幅広いカップリングパートナーの探索も行った。不斉発現が困難とされている1電子的なカップリングパートナーのみではなく、不斉発現が比較的容易な2電子的なカップリングパートナーも検討した。その結果、2電子的なカップリングパートナーで反応が進行する試薬は見いだせなかったが、1電子的なカップリングパートナーは低収率ではあるが反応が進行する試薬を新たに1つ見出した。まとめると、本研究テーマに関しては、あまり順調ではない。 しかし、本反応を研究している際に、アミノ酸のアミンを足掛かりにした新たな変換反応を見つけることに成功した。そこで、酸化剤や触媒、溶媒、温度などの検討を行い、詳細な条件探索を行った。その結果、入手容易な試薬を用いて、室温で10分と非常に温和で速い条件を見出すことに成功した。また、本反応の基質一般性も行っており、様々なアミンを対象に反応が進行することを確認している。本反応は、これまで私たちの研究室で合成した立体が非常に大きいアミノ酸から、様々なユニークな官能基に変換できる可能性があり、従来法では困難なアミノ酸の変換方法の開発の第一歩を踏み出した。よって今年度の研究の進捗は総合的にみると順調である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、新たなに見出したアミノ酸のアミンを足掛かりにした変換反応の論文化を目標に行動する。現状、条件最適化は大まかに完了しており、現在は基質一般性の途中段階である。よって、まずはどの官能基が本反応系において許容されるのか確認するため、様々な基質で反応を行う予定である。その後、本反応系のさらなる有用性を示すため、様々な変換反応を行うことを計画している。この際に、ベイズ最適化といった機械学習を用いることで、より少ない実験量のデータを使い、高収率で進行する反応条件を見出そうと考えている。また、今回合成した化合物の特性を予測するための方法を確立し、未知の類似化合物の特性を合成する前から知ることを可能にしたいと考えている。そのために、化合物の特性と物性が相関するパラメーターを計算科学の手法などを用いて予測する予定である。実際に、今のところ相関係数が0.8程度のものを見出しており、さらに計算手法や抽出するパラメーターを変更したりし、精度を上げようと考えている。続いてDFT計算やラジカルトラップ実験などのメカニズム解析を行い、本反応がどのように進行しているか明らかにする。最後に、本手法で合成されたアミノ酸誘導体を組み込んだペプチドを合成し、これらの創薬、医薬分野における有用性を調べる。非天然αアミノ酸を構成要素として有するたんぱく質やペプチドには、構造の安定化や脂溶性の増加、ペプチターゼ耐性の増加など、天然アミノ酸に見られない特異な性質をもつことが知られている。よってペプチド医薬品に合成したアミノ酸誘導体を組み込むことによる生理活性・物性等の機能評価を行い、本研究が医薬、材料科学等の分野に貢献することを示す。
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