研究課題/領域番号 |
22KJ2403
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補助金の研究課題番号 |
21J22192 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 徳島県立博物館 (2023) 九州大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
外村 俊輔 徳島県立博物館, その他部局, 学芸員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | マルハキバガ科 / キバガ上科 / 腸内分解機構 / 系統学 / 生態学 / 分類学 / 幼虫生態 |
研究開始時の研究の概要 |
主に腐植食者で構成されるマルハキバガ科が持つ種多様性の創出に関わる要因の解明を目指す。まず、国内における12属+不明2属に関して、野外調査と研究機関からの借用により標本を収集して分類学的基盤を整備し、国内の種多様性を明らかにする。また、遺伝子領域の配列決定により、分子情報の蓄積と属内の系統推定を試みる。次いで、主に採卵により幼虫を飼育し、食性、生息微環境などの生態情報を蓄積する。幼虫の中腸の細菌叢の解析と成虫の交尾器接合状態の観察による機能の推定を行う。生態、細菌叢の差異や交尾器等の形態を系統樹にマッピングし、形態、生態、分解機構のいずれが本科の多様化に強く関わっているかについて考察する。
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度に収集できなかったサンプルの収集に加え、分類学的研究、生態の観察、分子実験等を行い、国内におけるマルハキバガ科の解明を進めることができた。 分類学的研究では、九州、本州、沖縄県、小笠原諸島で採集を行ったほか、標本調査によって新たに不明種が見出され、1属を除いて幼虫の生態、食性が解明された。本州・九州において、旧北区に分布する日本未記録属の不明種を見出した。小笠原諸島において、日本未記録属かつ諸島固有と考えられる未記載種が得られ、産卵基質と初齢幼虫の生態も判明した。また、形態とDNA情報の検討から、本個体群が諸島内で形態的・遺伝的に分化していることが示唆された。本件に関しては論文の投稿を準備している。Schiffermuelleria属に関して、本州と琉球列島にて複数の不明種を確認し、形態比較と属の問題に関して日本鱗翅学会で発表した。また、以前より九州、本州の低地で得られていた本科の不明種に関して検討を進め、飼育によって幼虫期の生活史も解明し、日本未記録属Stereodytis属の新種として記載論文を出版した。また、本種の系統的位置や生態に関しても議論し、成果を日本昆虫学会で発表した。Promalactis属では、国内のタイプシリーズの確認を行い、いくつかの問題点を見出した。幼虫期の腐植物の分解機構では、昨年に続き腸内細菌叢解析のためのサンプルを追加したほか、一部の属に関して野外寄主と異なる寄主の摂食と羽化を確認し、潜在的な寄主範囲が広いことが示唆された。交尾器形態の進化に関して、特に属内多様性が高いPromalactis属で国内外の42種を用いた分子系統推定から、非対称な交尾器形態が特定のクレードで出現していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度に引き続き野外採集、幼虫生態の観察、分類学的研究、分子系統解析を中心に行い、それぞれ一定の進捗があった。12属+2不明属のうち13属59種でDNAを抽出し、COIバーコード領域の配列決定を行った。標本調査を国内に関しては予定通り行うことができ、追加で未記載種が発見された。また、その成果の一部は論文として公表することができた。小笠原諸島と琉球列島における調査により、本科の種レベルでの多様化要因の一つとして地理的隔離が大きく影響していることが示唆された。腐植物分解機構に関して、実験のための幼虫のサンプルの確保と共に、寄主範囲に関するデータを得られた。交尾器形態の進化において、Stereodytis属等において交尾状態の固定を行ったが、非対称な交尾器を持つ種では成功に至っておらず、属内の分子系統推定などから非対称性の出現要因について考察した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、研究拠点の異動に伴う研究環境の変化が生じたことから、四国地方と中部地方の野外調査と幼虫の飼育、形態観察を中心に行うと共に、これまでに得られたDNA情報を用いて形態、生態において議論が可能な頑健な系統関係の科内・属内での構築を目指す。環境が整い次第、各種のDNA抽出の再開と他領域の配列決定を再開する。腸内分解機構に関して、飼育により幼虫サンプルをさらに追加し、前拠点である九州大学昆虫学分野と協力して腸内細菌叢の解析と比較検定を行う。交尾状態の観察においては、昨年度も採卵のための成虫サンプルの採集が難航したため、昨年度固定し成功した種を用いて観察を行いつつ、非対称な交尾器を持つ普通種での観察を試みるとともに、属内の複数遺伝領域の分子系統推定などを用いて考察を進めていく。分類学的研究に関して、昨年度新たに得られた知見を含め、属の再検討などより大きい形での公表に努める。
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