研究課題
特別研究員奨励費
器官形成において、幹細胞は非対称に分裂し、核が局在し極性をもちながら機能に適した形態に変化しながら多層化し分化していく。しかしながら、その極性化と呼ばれる形態変化をもたらす細胞内外のメカニズムについてはあまりわかっていない。申請者は歯の歯原性上皮細胞をモデルとして極性および多層化に重要と思われる候補遺伝子の同定に成功し、同定した候補遺伝子が極性化および多層化を生じるメカニズムを解明することを目的として研究を開始している。これらのメカニズムの解明ができれば、細胞の「かたち」を作り、器官を形成するメカニズムの解明につながると考えられる。
器官形成の過程では、細胞は増殖し多層化しながら分泌や吸収といった目的の機能を果たす器官を形成する。歯において、歯原性上皮幹細胞はエナメルを形成するエナメル芽細胞へと分化するが、その過程で球状の細胞形態が円柱状になり、核はマトリックスを分泌する方向とは反対側の基底側に局在するようになる。このような頂端側と基底側が生じる細胞の形態変化は極性化と呼ばれ、極性化には細胞接着が関与するとされるが、細胞内の詳細なメカニズムは不明である。申請者は、このようにダイナミックな細胞形態の変化を生じる歯原性上皮細胞を、極性化と多層化のメカニズムの解析モデルとして設定し、細胞の極性形成および多層化に重要と思われる候補遺伝子の同定に成功した。歯原性上皮細胞株に対して候補遺伝子の遺伝子欠損細胞株(KO)を樹立し、野生化と比較したところ、KOでは上皮多層化が阻害された。また候補遺伝子発現ベクターを作成し、GFPにて可視化したところ、GFP陽性細胞が多層化することがわかった。同定した候補遺伝子がコードするタンパク質は、細胞膜だけでなく核内にも局在することが判明しており、同タンパク質が核内において転写共益因子として作用することが示唆されたため、胎生14日齢マウス臼歯歯胚を用いて細胞分画法にてクロマチン分画のみを抽出し、免疫沈降および液体クロマトグラフィー質量分析を行なった。これにより、クロマチン分画において結合する転写因子を同定することに成功した。同定した転写因子は、上皮多層化に極めて重要とされる転写因子であり、核内移行した候補遺伝子は核内で転写因子と結合することで、多層化などの上皮形成を促進している可能性が示唆された。
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