研究課題/領域番号 |
22KJ2420
|
補助金の研究課題番号 |
22J10770 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
齊藤 圭太 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | ソフトマター / 液晶液滴 / ホログラフィック光ピンセット / ヤヌス粒子 / 複雑流体 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞などのソフトマターは構成要素間の結合が弱いため、熱揺らぎ等の微小な力がその物性を決める重要な要因となっている。近年、生体物質が生み出す微小な力により、細胞内部の巨視的物性を変化することが明らかになり、局所的な揺らぎが生命現象に重要な役割を担うことが示唆された。本課題では、局所駆動と誘起される非平衡構造を関係づけるため、運動制御可能なアクティブ粒子が導入された非平衡ソフトマターを用いて研究を推進する。 さらに、その構造が作りだす巨視的物性を明らかにし、高効率な物性制御が可能である非平衡ソフトマターの創生を目指す。
|
研究実績の概要 |
近年、ソフトマターである細胞内部では、生体物質が生み出す局所揺らぎが生命現象に重要な役割を担うことが示唆された。このようなソフトマターの特徴的な物性を理解するため、高分子溶液などのソフトマターと制御可能な外場応答性粒子(以下、アクティブ粒子)で構成される非平衡ソフトマターを構築し、アクティブ粒子の運動とこれにより誘起される非平衡構造との関係を解明することを本研究の目的とし研究を推進する。 局所駆動された非平衡ソフトマター構築のため、本年度は、局所力源であるアクティブ粒子の作成と、粘性溶液または、粘弾性溶液中でのアクティブ粒子の運動解明に取り組んだ。アクティブ粒子の運動によって誘起される非平衡構造が異なると予想されるため、円偏光により粒子回転が制御できる液晶液滴と電場により並進運動の制御が可能なヤヌス粒子を作成した。また、得られた研究結果を元に、学会発表や論文投稿を行い、積極的に情報発信を行った。 液晶液滴の研究では、液滴の内部構造と回転メカニズムについて調べ、そのエネルギー効率について定量的に評価した。さらに、ホログラフィック光ピンセットと液晶液滴を組み合わせることで、マイクロスケールでの流動場の制御に成功した。ソフトマター中での液晶液滴の振る舞いを調べるために、最初のステップとして粘性溶液中(グリセリン水溶液)での運動について調べたところ、粒子表面でスリップが起きていることがわかった。粒子表面でのスリップのため、水中と比べると、粒子間の流体相互作用が低減される様子も観察できた。 ヤヌス粒子の作成については、京都産業大学の岩下氏から教えて頂くことで、我々の実験室でも粒子作成ができるようになった。ソフトマター中における運動として、粘弾性溶液中でのヤヌス粒子の運動について調べたところ、粘弾性体溶液からの復元力により粒子にトルクが働き、回転運動が誘起されることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、計画通りに液晶液滴とヤヌス粒子の作成・制御に成功し、その運動メカニズムについて明らかにすることができた。 液晶液滴の研究では、内部構造と回転メカニズムを関係づけ、定量的に運動を評価することで、運動メカニズムとエネルギー効率を明らかにすることができた。さらに、液晶液滴とホログラフィック光ピンセットを組み合わせることで、マイクロスケールの流動場の制御に成功した。粘性溶液中では、液滴表面でスリップは起きていることを示唆する実験結果も得られ、ソフトマター中での液滴運動に関する新たな知見が得られた。 ヤヌス粒子の作成では、京都産業大学の岩下氏から教えて頂くことで、我々の実験室でも粒子作成が可能になった。ヤヌス粒子を粘弾性体溶液中で駆動すると、粘弾性体溶液からの復元力により粒子にトルクが働き、回転運動が誘起されることが明らかになり、ソフトマター中のヤヌス粒子の運動に関する新たな知見が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
液晶液滴の研究では、粒子表面でのスリップ現象を理解するため、粒子周囲での流動場の可視化や理論値との比較などを行い、定量的理解を目指す。さらに、スリップの物理的起源を明らかにするため、同じ粘度を持つ異なる媒質を使用した実験などを計画している。 ヤヌス粒子の研究では、集団運動に焦点を当てて研究を進める。ヤヌス粒子により局所駆動される系が生み出す巨視的物性を測定するために、電場印加可能なレオメーターを構築し、力学物性測定に取り組む。さらに、レオメーターと顕微鏡を組み合わせることで、内部構造の観察と力学物性測定を同時に行い、内部構造とその構造が誘起する物性の関係解明に取り組む
|