研究課題
特別研究員奨励費
脂質はエネルギー源,生体膜構成,Gタンパク質共役受容体などの宿主受容体を介した生理活性の誘発などの役割を担う.これまで,脂質の生理活性作用は多数報告されており,受容体とそのリガンドの決定は創薬などに役立つ.本研究では,宿主受容体とその脂質リガンドを微量サンプルから迅速かつ網羅的に特定できる,超臨界流体クロマトグラフィーと質量分析を基盤とした解析プラットフォームを開発することを目的とする.実際に,マウス糞便の脂質抽出サンプルを本解析プラットフォームに供し,腸内細菌叢由来の脂質リガンドの探索を試みる.
本研究では,宿主受容体とその脂質リガンドを微量サンプルから迅速かつ網羅的に特定できる,超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) と質量分析 (MS) を基盤とした解析プラットフォームを開発することを目的とした.昨年度は (1) SFCを用いた脂質クラスごとに分離可能な分析系構築,(2) 構造解析のための脂質MS/MSデータベースの構築,(3) SFC-フラクションコレクター (FRC)/MSシステムの構築の3点を行ったため,本年度は (4) SFC-FRC/MSシステムの実用性の検証,(5) 脂質MS/MSデータベースを用いた構造解析の2点を行った.また,I型ナチュラルキラーT (iNKT) 細胞の脂質リガンドを標的として,解析プラットフォームの実用性の検証した.(4) 昨年度構築したSFC-FRC/MSシステムの実用性の検証: 昨年度構築した分析系とSFC-FRC/MSシステムによりサンプルとして哺乳動物血清の精製画分を分取した.さらに,この分取サンプルに対してiNKT細胞の活性を評価したところ,顕著な活性を確認することができた.(5) 昨年度構築した脂質MS/MSデータベースを用いた構造解析: 活性画分に該当するMSスペクトルおよびMS/MSスペクトルを解析したところ,脂質リガンドと考えられるHexCer分子種を特定することができた.さらに,同一分子種の標準品を哺乳動物血清の精製画分にスパイクし,構造の詳細な解析を実施した.その結果,脂質リガンドであるHexCer分子種の同定に成功した.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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