研究課題/領域番号 |
22KJ2460
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補助金の研究課題番号 |
22J20613 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤尾 秩寛 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | スクラムジェットエンジン / 深層学習 / 最適化 / 感度解析 / データマイニング / 圧縮性流体力学 / 宇宙輸送システム工学 / 逆解析 / 宇宙輸送 / 流体力学 / スクラムジェット / 極超音速流体 |
研究開始時の研究の概要 |
持続的宇宙開発の実現に向け将来型宇宙輸送システムが待望されている.極超音速空気吸込み式エンジンであるスクラムジェットはその推進機関として有望であるが,実現には先進的設計手法と流体挙動の理解が不可欠である.特にインテーク(空気取入口)での空気圧縮と,瞬時の混合を達成する燃料噴射が重要であるが,インテークが燃料混合に与える影響は解明されておらず,また相互作用を考慮した設計は実現していない.本研究では深層学習による流動予測を用いた逆解析手法を構築し,燃料混合を考慮した上でインテークの網羅的設計探索を実施する.データ科学的手法による解析を通じて内部流動と性能の関係性の理解と最適設計の指針確立を目指す.
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研究実績の概要 |
高効率かつロバストな燃料混合を補助するスクラムジェットインテークの設計手法の確立に向けた本研究において、実施計画に基づき本年度はスクラムジェットインテークが下流の燃料噴射・超音速燃焼に与える影響を調査した。特に、衝撃波と燃料混合の干渉が燃料混合に与える影響について、これまでに構築したデータ駆動型モデルベース多目的最適化・感度解析フレームワークを改良し、流動現象の解析を実施した。前年度までのフレームワークでは、モデルの予測誤差を考慮せずに解析を実施していたが、不確実性解析による誤差推定を組み込むことでモデルの予測誤差を考慮した解析が実施可能となった。このフレームワークを用い、2次元スクラムジェット燃焼器中の壁面からの燃料噴射に対し、効果的に燃料混合を促進し推力を増加させられる衝撃波/噴流干渉の形態を流動予測を用いた多目的最適化によって明らかにした。衝撃波の位置・角度、燃料噴射角度等によって決定される干渉形態が3種類に区分されることを示し、感度解析を通じて干渉の形態が変化する条件を明らかにした。これらの結果に基づいて、干渉形態の遷移を解析的な関係式によって表現することができた。また、燃焼計算を実施し干渉形態ごとの性能や衝撃波の入射が燃焼に与える影響を調査した。その結果、適切な位置に衝撃波が入射することで燃料噴射下流の低圧領域の圧力を上昇させ、OHラジカルの生成を促すことで燃焼効率が上昇することを明らかにした。干渉形態の遷移を検証すべく、現在、超音速風洞実験を進めている。準備はおおむね完了しており、次年度前半には実験を実施する計画である。また、前年度までに構築した流動予測手法をさらに拡張し、3次元流れ場や超音速燃焼流れ場への適用も実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)前年度までに構築した深層学習による流動予測を用いた最適化・感度解析フレームワークの改良、(2)スクラムジェット燃焼器における燃料混合の最適化・感度解析、(3)超音速風洞実験の準備を主に実施した。特に(1)・(2)において、当初の計画以上の成果が得られた。(1)では予測モデルに確率的性質を与えることで不確実性解析を可能にし、これにより予測誤差の事前推定が可能となった。誤差推定によって予測結果の検証に用いるCFD回数を大幅に削減でき、解探索・感度解析における計算コストの大幅削減を実現した。(2)では(1)で改良したフレームワークを用い、燃焼器内での衝撃波による混合促進の最適化とデータマイニングを実施した。最適化を通じて得られた設計解に対し感度解析を実施することで最適解を特徴づける流体構造を抽出することができた。また、燃焼計算も実施しており、これまでに構築した流動予測手法が燃焼流れ場にも適用可能であることを確認した。(3)については、模型の作成、光学系・計測系の構築等が完了しており、実験可能な状態である。一方で、当初検討していたヘリウムを用いた実験から窒素を用いた実験に変更した。変更に伴って数値計算等を再度実施している。 これらの状況を総合的に鑑み、「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、超音速風洞実験に加え、燃焼器からの設計要求を考慮したインテーク逆解析手法の開発に取り組み、予定していた目標の達成を目指す。 超音速風洞実験については、令和6年度前半中に実施できる見込みであり、準備をさらに進めている。 逆解析手法の開発については、(1)逆設計において入力として与える性能変数の選定、(2)深層生成モデルの比較を実施し、インテーク逆設計手法を構築する。これまでの取り組みから、燃焼器性能に影響を与えるインテーク流れの特徴量が明らかとなっており、さらにインテーク性能変数間の関係式が得られていることから、これらを用いて逆設計の入力を定義する。また、これまでに提案されている様々な深層生成モデルを実装し、インテーク逆設計問題に適用することで、本問題に適したモデル構成を明らかにする。また、これまでに提案している流動予測を用いた多目的最適化と比較し、計算コスト・精度での利点を明らかにし、取りまとめる。 また、上記計画の進捗に応じて、これまでに開発した流動予測・最適化・感度解析等を3次元/非定常/燃焼流れ場などより複雑な問題に適用し、その適用可能性を調査するとともに手法の改良に取り組む。
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