研究課題/領域番号 |
22KJ2500
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補助金の研究課題番号 |
22J00948 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分49040:寄生虫学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
林下 瑞希 (2023) 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 特別研究員(PD)
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特別研究員 |
林下 瑞希 (2022) 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シャーガス病 / クルーズトリパノソーマ / ミトコンドリア / 寄生戦略 / 質量分析 |
研究開始時の研究の概要 |
世界保健機構WHOにより「顧みられない熱帯病」に指定されるシャーガス病は、病原体となる寄生虫:クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)の感染により引き起こされる。 寄生虫をはじめ、細菌やウイルスなどは寄生戦略として宿主細胞内の宿主ミトコンドリアと様々なタンパク質を介して相互作用することが知られている。T. cruziも宿主ミトコンドリアと相互作用することが最近報告されたが、そのメカニズムや関与するタンパク質は明らかでない。 本研究では、T. cruziと宿主ミトコンドリアの両者タンパク質に着目し、T. cruzi-宿主ミトコンドリア相互作用のメカニズムと、寄生環境適応分子機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
寄生虫、細菌、ウイルスなどは、宿主細胞内でタンパク質を介して宿主ミトコンドリアと相互作用することが知られている。クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)は病原性寄生虫の一種で「顧みられない熱帯病」に指定されるシャーガス病を引き起こす。T. cruziの生活環で宿主細胞内のステージはアマスティゴート(AMA)と呼ばれ、宿主細胞内で急激に分裂・増殖し宿主細胞の破壊を繰り返すことで病原性を示す臨床的に最も重要なステージである。最近の先行研究からAMAも宿主ミトコンドリアと相互作用することが報告されたが、その意義や分子機構は明らかでない。 本研究では、AMAと宿主ミトコンドリアのタンパク質ダイナミクスに着目して両者間相互作用の分子機構の解明を目指す。質量分析法を用いて相互作用関連タンパク質候補を網羅的に同定し、それらの既知の機能を手掛かりに関連性の高いタンパク質に焦点を絞り機能解析を行う。 本年度は、昨年度に作製した発光(RE9h)と蛍光(mNeonGreen)を同時に検出できる遺伝子組換え原虫を用いた実験を開始した。ここで得られた株に対し、Crispr/Cas9系を用いてmNeonGreen遺伝子ノックアウトを試みた。ここで用いた手法はフランスの共同研究グループによりトリパノソーマ科原虫のLeishmaniaとTrypanosoma bruceiを標的として確立された系である。 本研究では、感染細胞からの原虫と宿主ミトコンドリアの単離と質量分析(次年度)の結果が得られたら、そこから原虫-宿主ミトコンドリア相互作用に重要な候補タンパク質を同定する。同定されたタンパク質のノックアウト株を作製するにあたり前述のCrispr/Cas9系をT. cruziに応用することが必須である。よって、現在T. cruziに対するCrispr/Cas9系の条件検討を重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はCrispr/Cas9系を用いてmNeonGreen遺伝子ノックアウトを試みた。ここで用いた手法はフランスの共同研究グループによりトリパノソーマ科原虫のLeishmaniaとTrypanosoma bruceiを標的として確立された系である。本年度は、前述のフランスのグループから博士課程学生が研究室に短期滞在で来ていた為、まず、彼女からノックアウトの手法を習得することを優先した。 本研究課題では、病原体-宿主の相互作用について、関与するタンパク質群を把握することで寄生現象を理解することを目指す。まず、原虫と宿主ミトコンドリア双方の生理的に重要なタンパク質候補を質量分析により絞り込み、原虫側のタンパク質はCrispr/Cas9系用いてノックアウト株を、宿主細胞側のタンパク質はsiRNAを用いてノックダウン細胞を作製する。そのために、効率的に原虫の遺伝子をノックアウトできることは必須である。 昨年度に作製を終えたRE9h-mNeonGreen発現原虫を用いて、試験的にmNeonGreen遺伝子をノックダウン標的に設定しT. cruzi におけるCrispr/Cas9系の条件検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
感染細胞から宿主ミトコンドリアとAMA の集合体(①)を単離し、質量分析法(LC/MS-MS;外部委託)を用いてAMA-宿主ミトコンドリア間相互作用に関与する候補タンパク質を網羅的に得る。その際、比較対象として非感染宿主細胞から単離したミトコンドリア(②)と、酸性条件下で培養する事で得た細胞外AMA(③)を用いる。 続いて上記①と②③を比較し、発現に違いが見られるタンパク質を選出する。既知のタンパク質機能を手掛かりに、AMAと宿主ミトコンドリアの両サイドから生理的に重要なタンパク質を探索する。その際既知のタンパク質機能は、UniProtなどのデータベースを用いて調べる。 網羅的に得たAMA-宿主ミトコンドリア相互作用関連タンパク質候補から、ミトコンドリア移行シグナルや膜貫通領域を有するタンパク質を優先的に選別する。原虫側のタンパク質はCrispr/Cas9系用いて標的分子のノックアウト株を、宿主細胞側のタンパク質はsiRNAを用いてノックダウン細胞を作製する。ノックダウンとノックアウトの確認はウェスタンブロッティング法と免疫染色法により特異的抗体を用いて行う。 作製した遺伝子組換え原虫、変異宿主細胞を用いて感染実験を行い、AMAの増殖能や感染能への影響を観察し、相互作用関連タンパク質候補の個々の機能評価を行う。最終的に、AMA-宿主ミトコンドリア相互作用を担うタンパク質を見出し、T. cruziの寄生環境適応機構におけるAMA-宿主ミトコンドリア相互作用の意義を明らかにする。
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