研究課題
特別研究員奨励費
現在、DNA・RNAと蛋白質の解析技術が発展してきたが、脂質、特に生体膜脂質二重層の内側にある脂肪酸に関しては解析技術が少なく未知の点が多い。我々が開発した急速凍結・凍結割断レプリカ標識(QF-FRL)法では膜脂質の“親水性頭部”の違いを認識し標識することで膜脂質の特異的な標識が可能となった。本研究では、QF-FRL法を改良し逆転凍結レプリカ脂肪酸標識法を開発し、生体膜脂質の“疎水性尾部”標識を可能にし、脂肪酸分布解析を行う。近年、不飽和脂肪酸が様々な生理機能に影響することがわかってきたがその機序は不明である。本研究の開発によって、疾患及び疾患改善と、脂肪酸代謝及び摂取との関連を明らかにする。
本研究では、脂質の“親水性頭部”を標識することができるQF-FRL法の改良により、“疎水性尾部”の違いを認識する「逆転凍結レプリカ脂肪酸標識法」を開発し、生体膜における脂肪酸の微細分布を解析することを最終目的としていた。令和3年度において、アルキン化オレイン酸(1価不飽和脂肪酸)を哺乳類培養細胞に取り込ませた後、アルデヒドで固定しbiotin-azideと反応させることにより、蛍光標識したことで、脂肪酸の特異的な局在を明らかにすることができた。さらにその成果を受け、令和4年、令和5年度には、アルキン化オレイン酸以外の様々な種類の脂肪酸についても同様の実験を試みた。しかしながら、それぞれの条件の最適化に時間を要し、それぞれの脂肪酸についての蛍光標識法の確立には至らなかった。また、令和5年度には、急速凍結・凍結割断レプリカ標識(QF-FRL)法の改良によって開発した逆転レプリカ脂肪酸標識法を用いて、脂肪酸の微細分布を検討する実験を行った。エッチングを行い、親水性頭部を露出させたレプリカ薄膜では、アルキン化オレイン酸あるいはアルキン化アラキドン酸共に、生体膜において特異的な標識が得られなかった。一方で、エッチングをしない逆転レプリカ脂肪酸標識法を用いて電子顕微鏡によって観察すると、レプリカ薄膜ではアルキン化アラキドン酸のアルキン基を標識することに成功した。つまり、生体膜のアラキドン酸が親水性領域側にアルキン基、つまり脂肪酸の末端が露出していることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids
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