研究課題/領域番号 |
22KJ2570
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補助金の研究課題番号 |
22J23111 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
平野 元春 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 細胞膜透過性ペプチド / タンパク質間相互作用 / 超二次構造 / ヘリックスループヘリックス / 両親媒性構造 / α-ヘリックス / ヘリックス・ループ・ヘリックス構造 / 両親媒性ペプチド / ヘリカルペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内のタンパク質間相互作用(PPI)を阻害可能なペプチドは、PPI阻害の創薬モチーフとして注目されているが、その多くは単独で細胞内移行することが難しく、細胞内で十分な機能を発揮できない。そのため、細胞膜透過性ペプチド(CPP) を用いたPPI阻害ペプチドの細胞内輸送が研究されている。そこで本研究では、研究室内で開発してきた二次構造制御型CPPを利用することで、細胞内外の環境に応じて構造が変化し、PPI阻害ペプチドの効率的な細胞内輸送を可能とするデリバリー手法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
生体内に存在する多くのタンパク質は、タンパク質-タンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction; PPI)することで様々な機能を発揮している。その一方で、細胞内PPIはガンをはじめとした多くの疾病の発症にも関与しているため、魅力的な創薬標的として注目されている。しかし、細胞内PPIの阻害は、低分子や抗体などの従来の分子では困難であるため、新規モダリティとして中分子ペプチドが注目されているが、一般的にペプチドは効率的に細胞内へ移行することが難しく、細胞内移行性を向上させる修飾が必要になる。特に、細胞膜透過性ペプチド(Cell-penetrating peptide; CPP)を細胞膜透過ドメインとしてPPI阻害ペプチドに結合させる方法が汎用されるが、エンドソーム脱出や両親媒性向上に伴う細胞毒性が問題となる。この課題を解決するため、超二次構造の一つであるHelix-loop-helix(HLH)構造に着目し、環境応答性の構造制御型新規CPPの開発を行った。 本研究では、前年度から引き続きビタミンD受容体(VDR)を標的としたHLHペプチドの開発を行い、生理活性評価をルシフェラーゼアッセイ、およびRT-qPCRで行った。また、新規のペプチドとして、p53-MDM2相互作用を阻害するMDM2標的のHLHペプチド開発を行い、ウェスタンブロッティング、およびRT-qPCRによる評価系の確立、生理活性評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に見出したVDRを標的としたHLHペプチド(1)のPPI阻害活性評価、および誘導体の設計・合成を行なった。疎水性の高さに由来する非特異的な毒性を抑制するために、アミノ酸残基の側鎖間における疎水性相互作用を参考にして、ペプチド1を基に分子全体の疎水性を低下させたペプチドを設計・合成した。新たに合成したペプチドは、CDスペクトル測定による二次構造解析、およびタンパク質立体構造予測ツールAlphaFold2を用いた計算を行い、HLH構造を形成していることを確認した。次に、ルシフェラーゼアッセイ、およびRT-qPCRを行い、PPI阻害の活性を評価した。評価の結果、合成したHLHペプチドは細胞膜透過性が向上したにも関わらず、ルシフェラーゼアッセイ、およびRT-qPCR評価でともに顕著なPPI阻害活性を示さなかった。 また、新たにMDM2を標的としたp53-MDM2相互作用を阻害するHLHペプチドの開発を行なった。細胞膜透過ドメインには前年度同様に、申請者がこれまで開発を行ってきた両親媒性CPPを使用し、PPI阻害ドメインには、MDM2との結合に重要なp53のヘリカルドメインであるペプチドを用いた。PPI阻害活性は、p53の発現レベルの回復をウェスタンブロッティングで評価し、p53発現レベルの回復に伴うp53経路の再活性化をRT-qPCRで評価することにした。はじめに、p53-MDM2相互作用を効率的に阻害することが報告されているペプチドATSP-7041をポジティブコントロールとして使用し、PPI阻害活性評価の条件を検討した。決定した条件に従い、ウェスタンブロッティングおよびRT-qPCRによりPPI阻害活性評価を行なった結果、細胞膜透過性に乏しいp53pはPPI阻害活性を示さなかった。一方で、設計・合成したペプチドもまた、顕著なPPI阻害活性を示さなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、p53-MDM2相互作用を標的としたHLHペプチドの開発を行う。PPI(p53-MDM2)阻害活性の評価系は確立したため、使用しているPPI阻害ドメイン(p53p)が細胞内でPPI阻害活性を示すことを確認するとともに、別のPPI阻害ドメインとしてpDI(LTFEHYWAQLTS)を使用した新たなHLHペプチド設計・合成し、任意の構造、および目的の阻害活性を示すペプチドを開発していく。また、細胞内でのMDM2に対する結合親和性をNanoBRETにより評価する。
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