研究課題/領域番号 |
22KJ2597
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補助金の研究課題番号 |
22J20706 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
大林 健人 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | GLP-1 / インスリン / インスリン感受性 / IRS2 / 求心性迷走神経 / 視床下部 / DREADD法 / リン酸化AKT / インスリン作用増強 / 交感神経 |
研究開始時の研究の概要 |
インスリン作用が低下する「インスリン抵抗性」は2型糖尿病の主たる成因である。研究代表者らは、腸ホルモンglucagon-like peptide-1(GLP-1)の分泌促進が<自律神経(求心性迷走神経)→脳>を介して、血中インスリン濃度依存的にインスリン作用を向上(インスリン抵抗性を改善)させる「新規GLP-1機能」を見出した。本研究では「腸GLP-1の血中インスリン濃度依存的なインスリン作用増強効果」の作用メカニズム(入力機構、中枢機構、出力機構)の解明を目指す。本研究成果は、GLP-1の自律神経系を介したインスリン抵抗性改善機構を明らかにし、2型糖尿病の根本治療/改善を可能とする新たな製剤・機能性食品開発の基盤研究となる。
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研究実績の概要 |
希少糖アルロースによる腸ホルモンglucagon-like peptide-1(GLP-1)の分泌促進は<求心性迷走神経→脳>経路を介して、血中インスリン濃度依存的にインスリン作用を向上させる。本研究では、本作用の詳細な作用機序(入力機構、中枢機構、出力機構)の解明を目指す。当該年度は下記内容を実施した。 1)入力機構:本年度は、求心性迷走神経特異的なインスリン受容体シグナル分子IRS2欠損マウス(Phox2b Cre×IRS2 flox/flox)を作出し、腸GLP-1と膵インスリンの協働的な有益作用における求心性迷走神経インスリン受容体シグナルの関与を検討した。本マウスでは、希少糖アルロースによるインスリン作用増強効果は完全に消失した。従って、求心性迷走神経のインスリン受容体シグナルが本作用に必須であることが示された。 2)中枢機構:昨年度、視床下部神経核AのX神経が腸GLP-1のインスリン作用増強に必須であることを明らかとした。他方、X神経は視床下部神経核Bにも局在している。そこで、化学遺伝学的手法(DREADD法)を用いて神経核BのX神経を人為的に活動抑制したところ、アルロースによるインスリン作用増強効果には影響しなかった。以上より、腸GLP-1のインスリン作用増強効果には、視床下部神経核BのX神経は関与しないことが明らかとなった。 3)出力機構:アルロース投与後の肝臓と骨格筋におけるインスリン受容体シグナルの鍵分子Aktのリン酸化を、ウエスタンブロッティング法を用いて定性・定量した。その結果、アルロースの投与は骨格筋のAktリン酸化を有意に増加させた。一方、肝臓のAktリン酸化は上昇傾向に留まり、またこの作用はGLP-1受容体欠損マウスで消失した。以上より、アルロースの腸GLP-1分泌促進は骨格筋のインスリン作用増強を介して糖代謝を向上させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、腸GLP-1のインスリン感受性亢進を制御する中枢・自律神経システムにおける1)入力機構、2)中枢機構、3)出力機構の解明を目指している。当該年度は、1)入力機構:求心性迷走神経特異的IRS欠損マウスの作出に成功し、腸GLP-1と膵インスリンによるインスリン感受性亢進作用に求心性迷走神経インスリン受容体シグナルが必須であることを示した。2)中枢機構:視床下部神経核BのX神経は、本作用に関与しないことを明らかとした。3)出力機構:ウエスタンブロッティング法の立ち上げに成功した。結果、アルロースによる腸GLP-1分泌促進は、主に骨格筋のインスリン感受性を増強することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1) 入力機構:本作用に関与する、より詳細な求心性迷走神経サブクラスを解析するため、求心性迷走神経節へのウイルスベクター微量注入法の確立を目指す。求心性迷走神経の標的遺伝子(IRS2やGLP-1受容体)もしくは標的遺伝子発現求心性迷走神経の活動を化学遺伝学的に制御し、腸GLP-1によるインスリン感受性亢進作用を検討する。 2)中枢機構:覚醒状態下での神経活動を記録するため、Fiber Photometry法を確立し、アルロース投与後の視床下部神経核Aの神経X活動を覚醒下マウスで検討する。このマウスにGLP-1受容体阻害剤投与や迷走神経機能障害手術を施すことで、アルロースによるX神経活性化のメカニズムを検討する。さらに腸GLP-1と膵インスリン同時分泌促進によって、X神経活動が増強しているのか、検討する。 3)出力機構:種々の遺伝子改変マウスや外科手術マウスを用いて、アルロースによる骨格筋インスリン受容体シグナル活性化をウエスタンブロッティング法にて検討し、本作用の入力機構→中枢機構→出力機構の一連の流れを証明する。加えて、非代謝性の糖(2DG)を用いた骨格筋の糖取り込み能評価系を確立し、腸GLP-1による骨格筋のインスリン作用増強効果をより詳細に検討する。
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