研究実績の概要 |
スピロプラズマは細菌アクチンであるMreBを5種類持ち(MreB1-5)、それらを駆使して液体中で遊泳運動を行う。 以前より続けていたスピロプラズマのMreB3とMreB5の研究について論文原稿を投稿し、査読コメントを受けてそれらのATPase活性と重合活性、電子顕微鏡による繊維構造を再評価するための追実験を行った。以上の結果をまとめて再投稿した原稿はOpen Biology誌に受理された(Takahashi D, et al., 2022, Open Biology, 12(10):220083)。また、上述の論文におけるMreBの精製とATPase活性測定の詳細なプロトコルを書籍”Methods in Molecular Biology”において発表した(Takahashi D et al., 2023, Methods in Molecular Biology 2646 -Bacterial and Archaeal Motility- (Springer, ISBN: 978-1-0716-3059-4) chapter 30 (p359-371))。 遊泳に必須なMreB5について、様々な溶液条件で電子顕微鏡観察を行うことで、MreB5は溶液条件の違いに依存してシートや束など様々な構造を形成することが明らかになった。また、主に静的光散乱法を用いた束化形成条件における生化学解析より、シート構造が成長して束化構造が形成されること、束化構造が静電相互作用や二価カチオンによって形成されること、MreB5の正電荷を帯びた構造を取らないC末端が束化構造の横方向の相互作用に重要であることを示した。以上の結果より、遊泳運動を駆動する際のMreB5の細胞内での役割を考察して論文原稿を執筆し、bioRxivにて公開した(Takahashi D et al., 2023, bioRxiv, doi.org/10.1101/2023.01.26.525654)。 また、スピロプラズマのゲノム上でMreBをコードする遺伝子の近傍に保存される機能未知遺伝子を発見し、それが新規のリポタンパク質をコードすることを特徴づけ、microPublication Biology誌にて発表した(Takahashi D and Miyata M, 2023, microPublication Biology, doi:10.17912/micropub.biology.000713)。
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