研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、これまで本研究代表者が開発を進めてきた金銅二元系触媒による環境調和型アミン酸化を応用することで、機能性診断薬としての利用が期待される多様なヘテロ元素を架橋させた希少な高機能蛍光色素分子の短工程・高収率合成法を新たに開拓する。本研究を通じて、機能性発現に有効なヘテロ元素の精密・複合導入を、酸化反応を軸に一挙に達成可能とすることで、画期的な機能性診断薬・治療薬の創出を目指す。
本年度は、金銅二元系触媒による環境調和型アミン酸化を応用することで、機能性診断薬としての利用が期待される多様なヘテロ元素を架橋させた希少な高機能蛍光色素分子の短工程・高収率合成法の開拓に挑んだ。対象とするヘテロ元素で架橋されたローダミン類縁体の合成には、1. アミン酸化を経るトリアリールメタン骨格形成 2. 酸素 (空気)酸化による脱水過程・酸化的芳香族化の段階が必要となる。そこで、まず金銅二元系触媒で1の段階が進行するかどうか検討を行った。共酸化剤や添加剤を加えることで収率の改善を試みたが、十分な転化率には至らなかった。一方、興味深いことに有機触媒としてサリチル酸誘導体を使用し、共酸化剤としてN-ヨードスクシンイミドを加えて反応させたところ、ベンジルアミンおよび3-(ジメチルアミノ)フェノールを用いたカップリング反応に続く酸化的芳香族化が円滑に進行し、ローダミン誘導体が良好な収率で得られることが判明した。得られた化合物はUV光照射下で鮮やかな橙色に発光した。単離精製を試みたが、形成される化合物は非常にシリカゲルとの吸着性が高く、またTLCによる反応追跡では分離が困難な副生物が反応進行に伴い増加するということも分かり、今後さらに精製法や反応条件を検討する必要がある。また、ホウ素により架橋されたローダミン誘導体も低収率ながら得られており、興味深い発光特性を有していることが明らかとなった。本年度は代表者の所属機関の異動および研究室の立ち上げなどもあり、色素合成の更なる洗練にまでは到達できていないが、研究を今後継続していくことにより本手法の有効性の確立を目指していく。本研究期間全体を通じて、金銅二元系触媒による医薬品類の迅速自在合成を多成分反応や触媒リサイクルにより達成するとともに、従来では酸化反応による合成が困難であった多彩な発光診断薬の合成にも研究を展開することに繋がった。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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