研究課題/領域番号 |
22KJ2632
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補助金の研究課題番号 |
22J22928 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
藤谷 海斗 兵庫県立大学, 兵庫県立大学大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | マイクロ流体デバイス / マイクロ波加熱 / マイクロ化学システム / コンビナトリアル合成 / スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、主に化学操作を高密度集積した遠心制御型ディスクとマイクロ波化学の融合による創薬プラットフォームの開発である。個々の工程をバッチ処理で行う既存のスクリーニングシステムは、大幅な多検体化と高速化に制限があった。当研究はマイクロ波励起とサイズ効果の併用による化学合成の飛躍的な高速化と、三次元的な流路の集積による多検体化を実現することで、革新的な創薬システムになると考えられる。本研究の完成は、COVID-19に代表されるパンデミック感染症や癌・遺伝子疾患などの難治性疾患に対する治療薬等の開発促進に寄与すると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究は、主に化学操作(混合やろ過など)を高密度集積した遠心力制御型ディスクとマイクロ波化学の融合による創薬プラットフォームの開発である。さらに薬理評価のためにスクリーニング(細胞検査)ディスクを集積することで、高い反応速度・収率での並列合成とそれらスクリーニング操作が一括で可能な集積化マイクロ化学システムを実現することを目的としている。2022年度は、1. マイクロ波(MW)加熱チップの高効率・高機能化と化学合成への応用、2. 化学操作集積のための微細加工プロセスの開発とその高精度化、3. MW照射中軟X線分析システムの開発、を行った。 1. 本研究課題申請時に報告しているMW加熱チップ(マイクロ流路内をマイクロ波加熱するためのチップサイズ導波路)を改良し、マイクロ波の共振と流路の最適化設計により、マイクロ流路内の溶媒の高温加熱を実現した。また並列加熱を行うために、単一導波路内での多流路加熱構造を開発し評価した。さらに、これらのデバイスを用いて、金属ナノ粒子や金属錯体等の化学合成に成功した。 2. 高アスペクト比(線幅/高さの比)な金属柱で構成されるMW加熱チップは、既存の微細加工法での試作や化学操作の統合が困難であった。この課題を解決するため、以下3つのプロセスを開発した。1)3Dプリンタによる金型の作製とモールド加工、2) リソグラフィとPMMA部品接合による金型の作製、3) X線リソグラフィによるパターンの直接形成。また放射光による材料分析により、微細加工の高精度化に成功した。 3. 軟X線分析とMW加熱チップを組み合わせた分析システムを開発し、マイクロ波の特異効果解明に向けた新たな分析手法を確立した。 以上の研究成果をまとめ、3件の国内学会および2件の国際学会で発表を行った。また、連名著者として2本発表した。さらに現在、筆頭著者として3本投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、マイクロ波加熱を含む化学操作集積のための要素技術開発を中心に行った。具体的には、医薬品合成への応用に向けたMW加熱チップの高効率・高機能化、ディスク上に化学操作を集積のための微細加工プロセスの開発とその高精度化、を行った。結果として、マイクロ波加熱効率の向上と、単一導波路内での複数流路の並列加熱を実現した。これらのデバイスを用いた化学合成にも成功し、微小空間での医薬品の高速合成の可能性が示された。さらに3つのプロセスを開発し、マイクロ波加熱構造を含む化学操作の容易な1ディスク集積が可能となった。現在、これらの要素技術を用いて、医薬品の高速合成のためのマイクロ化学システムを設計・試作している。またマイクロ波化学合成の桁違いな反応の高速化について、その特異的効果を解明するために、NewSUBARU放射光施設BL9とMW加熱チップを融合し、マイクロ波照射中の軟X線分析システムを確立した。現在までに、軟X線分析チャンバー内(高真空下)での固体試料のマイクロ波加熱に成功している。以上の結果は、筆頭著者として国際誌に論文を投稿中である。またこれらの成果は高速・多検体な創薬スクリーニングシステムを開発する上での有益な基盤技術であると考えられる。以上の理由からおおむね順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マイクロ波加熱を含む複数の化学操作を集積したチップ上で、既存薬をターゲットに医薬品の全自動・高速合成を試みる。また薬効評価を行うために、細胞培養が可能な環境を整え、チップ上での人由来の細胞を培養する。その後、これらのシステムをディスク上に集積し、遠心力による流体の精密制御によって自動化、並列化することを目標とする。さらに積層数を増やし、1システムあたり数百~数千種の並列合成とそのスクリーニングが行えるシステムの確立を目指す。 本年度開発したマイクロ波照射中軟X線分析システムは、まず加熱効率や最大上昇温度を調査しシステムの評価を行う。その後、反応系に合わせた分析用セルの改良と反応条件を吟味した分析を行い、マイクロ波照射中の電子状態や構造変化を追跡する。放射光分析の知見が集まり次第、高時間分解分析が可能なビームラインと開発したセルを融合し、マイクロ波化学反応の特異効果の有無について調査する。
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