研究課題
特別研究員奨励費
GABA受容体(GABAR)は抑制性神経伝達を担い、受容体開口特性はsubunitの組成で異なることが知られている。これまでにGABARは開口特性ごとにシナプス内外を棲み分けて局在する可能性を見出している。成長期のマウスの聴覚シナプスでGABARが同じ抑制性伝達を担うglycine受容体と同一神経細胞で共発現することから、両受容体subunitから成るhybrid受容体が形成され、シナプス内外で機能する可能性が示唆される。本研究ではGABAにもglycineにも応答し機能するhybrid受容体を解析することで、シナプス内外のGABARの役割の解明を目指す。
GABAR subunitとGlyR subunitから成るhybrid受容体が存在し、GABAとglycineそれぞれに応答するかを明らかにするために研究を進めた。昨年度、GABARb3とGABARg2の組み合わせがhetero五量体を形成し、GABA暴露により開口することを新たに明らかにした。そのため、GABARb3とGABARg2 とGlyRa1を含むcRNAのインジェクションでは、五量体を形成しうるsubunitの組み合わせが複数存在するため、実際に卵母細胞膜表面上にどの組み合わせが形成しているか分からない。hybrid受容体の形成を確認するためには、既知の組み合わせによる五量体の発現を抑止する必要がある。そこで、GABARb3とGABARg2のhetero五量体発現抑止及び、GlyRa1のhomo五量体発現抑止のため、GABARb3とGlyRa1、GABARb3と GABARg2 のsubunitを連結させたconcatemerをクローニングした。Concatemerを使う過去の研究では、リンカーの長さを合成時に複数条件検討しており、本研究でもリンカーの長さを13, 18, 24, 27 にデザインした。そのうち、GABARb3-(18)-GABARg2 と GlyRa1、GABARg2-(18)-GABARa3 と GlyRa1 の組み合わせで共発現させ、それぞれに GABA を曝露させた結果、 GABARb3-(18)-GABARg2 と GlyRa1 の共発現と GABARg2-(18)-GABARb3 と GlyRa1 の共発現の両方で電流値を測定できた。GABARb3-(18)-GABARg2 と GABARg2-(18)-GABARb3 を単独で発現させた際にも GlyRa1 homo でもGABA暴露による電流値は測定されなかったため、GABARb3-(18)-GABARg2 と GABARg2-(18)-GABARb3 は GlyRa1 との共発現で五量体を形成し、GABAで機能することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
もともと予定していた研究を遂行する中で、実験結果が得られている。
次年度も引き続き、研究計画通りに研究を遂行する。
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Scientific Reports
巻: 14 号: 1 ページ: 1-11
10.1038/s41598-024-57699-3