研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、近年増加している炎症性腸疾患や他の腸疾患の病態解明、治療開発において理解が求められている消化管上皮の修復機構を理解するため、腸管上皮幹細胞から多様な分化細胞を含む三次元構造体「オルガノイド」による消化管上皮修復モデルの構築を行う。その結果を検証することで、上皮再生メカニズムの解明を目指す。
消化管上皮は絨毛・陰窩構造からなり,陰窩底部に存在する幹細胞から分化した細胞が絨毛部に移動し,多くの細胞が1週間も経たないうちに絨毛部の先端頂部から脱落するというダイナミックな増殖・分化サイクルを有する.このような特徴を模した消化管上皮の体外(in vitro)培養は長年困難であったが,幹細胞ニッチ因子の同定により,小腸上皮幹細胞から多様な分化細胞を含む三次元構造体「オルガノイド」培養法が確立され,様々な分野への応用が加速している.当研究室では,これまでに絨毛構造を模したオルガノイド二次元培養法の構築に成功した(Sugimoto et al. Nature. 2021)が,消化吸収等の機能を有する培養系としての検証は不十分であり,形態だけでなく機能を模倣するオルガノイド培養系の確立が課題であった.本研究は,従来の培養系をさらに改変し,消化吸収などの機能を有した,より生体内の消化管上皮らしいin vitro培養系を開発することを目的として遂行してきた.昨年度までに,絨毛構造を有するオルガノイド二次元培養法を習得し,消化管上皮分化マーカーの発現誘導に成功した.さらに,上皮細胞の機能解析へと段階をすすめ,機能アッセイの結果と相互にフィードバックしながら改変を重ねてきた.今年度は,消化管の主要な機能である栄養素の吸収能に着目し,オルガノイド二次元培養における糖吸収の再現に成功した.本研究における成果をさらに発展させることで,将来的には炎症性腸疾患の病態解明や,消化管上皮の修復機構を検証するための新たなin vitro培養プラットフォームとなることが期待される.
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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