研究課題/領域番号 |
22KJ2717
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補助金の研究課題番号 |
22J21922 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石川 直樹 慶應義塾大学, 社会学研究科(三田), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 顔面皮膚血流 / 社交不安 / ほてり / 社会的交流 / 内受容感覚 / 自律神経 / 感情 |
研究開始時の研究の概要 |
感情に関連した指標である顔面皮膚血流では,これまで他者の感情表出の観察者において,その観察する表出に依存した変動パタンが明らかとなっている. 本研究では,他者の感情表出の観察者に起こる顔面皮膚血流の変動に対して,その変動の詳細な動態の検討,および変動の持つ機能の実証を行う.加えて,健常者において得られた顔面皮膚血流の動態と機能をもとに,対人場面や感情に関連した心の問題を抱える症例に対して,顔面皮膚血流という新しい観点での臨床的応用の可能性を検討する.
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研究実績の概要 |
2023年度は,2022年度に引き続き,対人場面における顔面皮膚血流(顔血流)の機能について検討を行った.特に,他者観察時の顔血流変動の大きさと,社交不安や赤面恐怖に関する傾向との関連性をより詳細に検討した.その結果,これらの傾向が強い人は,そもそもの顔血流の反応性が高いのではなく,対人,社会的場面に限定して顔血流の反応性が高いことが明らかになった.つまり,感情観察時における顔血流変動の機能においては,引き続き社会的な要素に関連した機能を検討していく必要性が示唆された. 加えて,これまでの研究で明らかとなった,他者の感情の観察時における顔血流の変動が,自身の赤面へのとらわれや社交不安傾向を高く持つ人ほど顕著であるという関係を踏まえると,これらの人物の,対人場面における顕著な顔血流の変動が潜在的,または顕在的に知覚され,その知覚によって社交不安症状が誘発されるという可能性がある.この顕著な顔血流変動の知覚,処理という点には,内受容感覚という観点が重要となる.特に,赤面恐怖症や社交不安症においては,顔の温度変化に対する内受容感覚という視点が重要であると考えられるため,この内受容感覚という視点でも研究を行った.ここでは内受容感覚の一側面である身体反応への注意傾向に注目し,全身に対する内受容感覚に対して,顔の温度変化に対する注意傾向は独立していることが示された.このことから,従来内受容感覚の指標として用いられてきた心拍という指標だけではなく,顔の温度変化に特化した内受容感覚の指標を考える必要が示されたといえる.この顔の温度変化に関する内受容感覚の測定方法は2023年度に作成し,現在妥当性や信頼性の検討を進めているところである. これらの結果は学会で発表し,広く議論を行ったほか,他者感情を観察している際の顔血流の動態については,論文を執筆し,国際誌に投稿,採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,他者の観察時における顔血流動態について,健常群と,社交不安に関連した臨床群の2群における比較研究を計画していた.臨床群を用いない研究においてはすでに実験の準備が整い,2024年5月ごろより実験開始することが可能である.一方で,社交不安群(臨床群)のリクルートが難航している.難航の理由としては,これまで病院でのリクルートを計画していたものの,該当する患者が少なかったことがあげられる.これは日常的に社交不安症状に悩みは抱えている人は多いものの,病院には行かない,また自身で対処方略をすでに獲得しているというようなことが考えられる.このことから,2024年度は病院でのリクルートに限らず,質問紙による厳密なスクリーニングを所属機関において広く行い,リクルートを進めることで参加者を確保していくことを考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては,他者の感情観察時における顔血流動態について,その社交不安との関連についての研究の論文化を目指す.加えて,顔血流変動と内受容感覚との関連について,2023年に得られた結果についても論文化を行う. 社交不安や赤面恐怖をもつ臨床群に対する研究が遅れているが,これは病院等での患者のリクルートが難航していることが1つの原因である.社交不安症状に悩みは抱えているものの,病院には行かない,また自身で対処方略をすでに獲得しているというようなことが考えられるため,本年度は所属機関におけるリクルートを行い,質問紙による厳密なスクリーニングを行うことで,臨床群と健常群の比較を行うことを計画している.この方法によって参加者のリクルートの難航を解消し,他者感情観察時の顔血流動態の比較,およびその機能の検討を進めていくことが可能と考える. 加えて,2023年度においては,他者の感情観察時の顔血流変動の機能や,臨床応用の可能性を考えるうえで,顔血流や顔の温度変化に限定した内受容感覚という視点が重要であることが示唆された.2024年度は作成した顔血流,顔温度に関する内受容感覚の指標を用いて,上記の顔血流の機能や社交不安症,赤面恐怖症のメカニズムを検討していく予定である.
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