研究課題/領域番号 |
22KJ2721
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補助金の研究課題番号 |
22J22598 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西田 知司 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | マイクロ流体力学 / 構造色 / スペクトル / 物質検知 / 生体化学物質 / センサ / 分光光度計 / 濃度測定 |
研究開始時の研究の概要 |
ウェアラブル機器の内部に汗などの生体由来の液体を取り込み,化学物質を連続的にセンシングする柔軟なマイクロ流体システムを提案する.本システムは,微小なポンプにより液体をセンサ部に送り,化学物質濃度を構造色に変換するゲルと光学センサを用いて,継続的に化学物質濃度の測定をするものである.本研究により,人の健康状態を液中の生体情報を用いて常時モニタリングするウェアラブル機器という概念の実証を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究は,ウェアラブルデバイス上で生体化学物質モニタリングを可能とする小型センサを実現するため,刺激応答性構造色物質を用いてセンシングする技術を研究するものである.2022年度にて機械応力に応答する構造色ポリマを用いてスペクトル測定をする方式で推進することにし,構造色ポリマ自体の色変化の確認を行った.2023年度は,この色変化を用いて1 mm角ガラス管内の液状物質のスペクトルを取得する試みを行った. 【構造色ポリマによる液状物質スペクトル取得】液中で吸収されるスペクトルを推定するため,予め(1)構造色ポリマ自体の反射スペクトル(色)変化,および(2)ガラス管内に水を通した場合の吸収スペクトル,の2点を測定しておき,正規化による補正を行った.その結果,黄色と緑色の食用色素のスペクトルの差(500 nm近辺)の検出に成功した.また,pHに応答して黄色(酸性)から緑色(中性)に変化するBTB溶液を用いてスペクトル測定を行い,色変化からpH変化を検出することに成功した.2022年度までに成功していた濃度測定と合わせて,ガラス管内の液体の色・濃度を測定するデバイスの作製に成功した. 【論文化】上記の内容をまとめ,論文誌「Sensors and Actuators A: Physical」に投稿し受理,出版された. 【新たな応用先】構造色ポリマにイオン液体が浸透するということが先行研究から示唆されており,電気化学的な応用が見込まれる.イオン液体が浸透した構造色ポリマの導電率を高めることで電気的パラメータと構造色を結びつけるセンサの確立を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は「液体の色・濃度測定を構造色ポリマを使ったデバイスで実施する」を目標とし,実際に成功して論文化まで順調に進めることができた.途中でシリカ粒子を変更することで構造色ポリマの反射特性を向上させスペクトル測定に応用可能なレベルにすることができた. また研究成果発表も順調に実施しており,6月に国内発表(ポスター),10月に国際会議発表(ポスター),1月に論文化の順で実施した. さらにイオン液体と構造色ポリマの組み合わせの研究にも着手し,導電率測定やスペクトル測定などに取り組んでいる.これにより人体やデバイスの電気的パラメータを色に変換することが可能になると見込まれる. 以上のように,順調に当初の計画をクリアしつつ,新しい応用先の発見に至った点から本研究課題は当初の計画以上に進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はイオン液体と構造色ポリマを用いたセンサに取り組む.このセンサは光,電気,機械の3領域にまたがる非常に興味深いものと考えている.現在,回路中にイオン液体・構造色ポリマセンサを組み込むことで,電流を阻害することなくセンサに加わる応力変化を色で検知する試みに取り組んでいる.このセンサへの取り組みは,将来的に電子回路の機械的安全性を色で示すことで電気・機械の両面から電子回路の安全性を周囲に知らせることが可能になると考えている.このセンサの研究を年内までにまとめ,論文化する. 現時点での課題は,構造色ポリマに組み合わせるための適切なイオン液体の選定と,そのイオン液体を安定的に構造色ポリマに浸透させるプロセス面の改善である.イオン液体の選定には電気化学分野の論文を参考にしつつ様々な種類のイオン液体を構造色ポリマに浸透させLCRメータで導電率を測定し,最適化する.プロセス面については,構造色ポリマの粘着性を解消し,かつイオン液体の浸透量を調整し構造色と導電率のバランスを見て決定する.
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