研究課題/領域番号 |
22KJ2724
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補助金の研究課題番号 |
22J22673 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小和口 昌愛 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | モンテカルロ法 / 交換モンテカルロ法 / 分子シミュレーション / 液晶分子 / 進化戦略アルゴリズム / ヒステリシス / 統計力学 / レプリカ交換 / 液晶 / 準結晶 / レプリカ交換法 / 進化戦略 / 閉じ込め系 / 最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
固体物理学では原子が無秩序に配列しているアモルファスか周期的に配列している結晶に関する研究が主に盛んに行われてきたため,最先端の材料技術やナノテクノロジーは既知の結晶構造を元に発展している.一方で,その両方の性質を持つ液晶分子やいずれの構造でもない準結晶に関しては基礎的な知見が不明瞭である.そこで,本研究では効率的な分子シミュレーション手法を開発し,これらの相挙動をより精確に予測することを目指す.さらに,系にナノスケールの空間的な制約を加えることによる相挙動の変化を解明し,物質科学の基礎をはじめとした多岐に渡る分野に基礎的知見を与えることを志向する.
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実施状況として,従来のレプリカ交換法と呼ばれる分子シミュレーション技法の一つとして知られる拡張アンサンブル法をさらに最適化するために,自然界の進化原理を適用した進化戦略アルゴリズムを導入した.シミュレーションの途中で分子の形状を変化させるハミルトニアンレプリカ交換の配置最適化を行うことで,液晶分子のヒステリシス問題を解決し,手法の改良に貢献することに成功した.この成果は学術論文として公表され,本手法が分子シミュレーション分野において新たな理解と技術の進歩を促すことが期待される.分子シミュレーションとは,コンピュータを使用して分子の挙動を模倣する手法であり,粗視化モデルとは大まかな分子構造の特徴を抽出したモデルを指す.これにより,計算コストを削減しつつ,分子間相互作用といったパラメータ依存性を理解することが可能となる.しかし,粗視化モデルを使用してもシミュレーションではヒステリシス現象が見られる.ヒステリシス現象とは,過去の履歴に依存する結果として,本来の挙動と異なる挙動を示す現象を意味する.系が充分に平衡状態に達していれば一つの確率密度を得ることができる一方で,シミュレーションでのヒステリシス現象は,使用したモデルやアルゴリズムの不完全性もしくは計算資源の限界に由来するとされている.本研究の学術的な価値として,ヒステリシス問題の解決により,液晶分子の熱力学的性質や相転移現象のメカニズムをより正確に理解できるようになったことと,計算の効率化に成功したことが挙げられる.この手法は,液晶分子だけでなく,複雑な物質のナノスケールでの挙動を予測するときにも役立つと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
液晶分子のヒステリシス現象をなくすために,分子の秩序性を促す閉じ込め系を手段として設けることが当初の目的であったが,本研究では相転移がより困難とされるバルク系での計算手法を工夫することでヒステリシス問題を克服することができた.これは,当初の計画していたこと以上の結果であるため,次年度は閉じ込め系を使用せずにバルク系における相転移現象の更なる考察や検討に関する研究を行うことをできると考える.また,進化戦略アルゴリズム以外に探索アルゴリズムをレプリカ交換法に組み合わせた手法を実装しているので,大幅に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した手法では,レプリカ交換法で使われるレプリカ数を固定するという制約条件の元成り立ったので,最終年度である次年度は,レプリカ数を調節できるアルゴリズムの開発を遂行する.ここではゲームに広く使われる経路探索アルゴリズムを組み込み,コンピューターサイエンスと統計力学の知見を融合させることでより効率的な手法を開発することに注力する.
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