研究課題/領域番号 |
22KJ2736
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補助金の研究課題番号 |
21J30001 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
田畑 絵理 工学院大学, 先進工学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | キチナーゼ / キチン / Chia / 分子進化 / 食性 |
研究開始時の研究の概要 |
ほ乳類の祖先は主に昆虫をエサにしており、その祖先に近い食虫性のツパイやメガネザルは CHIA の遺伝子重複の産物であるパラログを 5 種類保持する。これに対し、現在の多くの動物は 1~3 種のみ、CHIA を機能遺伝子として保持している。しかし、これらの CHIA パラログの転写量や機能についてはよくわかっていない。本研究は、多様な動物種を対象に、CHIA パラログ分子の機能の解析と比較を行い、どのように進化してきたかを明らかにする。そして、ヒトの CHIA パラログ分子の胃と肺における生物・医学的理解につなげることを目指す。
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研究実績の概要 |
酸性キチナーゼ(acidic chitinase, Chia)は、昆虫や真菌の外骨格を構成するキチンを分解する酵素である。Chia のパラログ数やそのキチン分解性は、動物の食性と大きく関わる。本研究は、現代の動物が保持する Chia のパラログ分子の機能について明らかにし、最終的にヒトの Chia パラログ分子の生物・医学的特徴を明らかにすることを目指す。本年度は、進化的解析の基盤のため、肉食性動物における Chia の酵素機能と分子進化の関係について解析を行った。活性の低いイヌと活性の高いマウスの Chia 間でキメラタンパク質、変異体を作製、解析することにより、イヌ Chia の活性低下を引き起こす 2 アミノ酸置換を明らかにした。そして、イヌが属する食肉目 41 種の Chia の配列を解析したところ、イヌ科、スカンク科、マングース科を除く 32 種で Chia は遺伝子喪失していた。さらに、昆虫を食べるスカンク、ミーアキャットは、完全な ORF を保存し、高い活性を示した。これらの結果から、現代でも昆虫を食べる種の Chia は活性が高く、他方、昆虫を食べない種では Chia が機能レベルで不活性な分子へと進化したことを明らかにした(Tabata et al.,Mol Biol Evol.39,msab331,2022)。以上の結果は、ほ乳類における食性の変化に伴う分子進化であり、また、ヒトの Chia パラログの理解のための進化的知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肉食性動物がもつChiaの低活性または活性喪失に関わるアミノ酸残基を同定した。また、同定したアミノ酸を手掛かりに、食肉目動物におけるChiaの機能と分子進化の関係を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、よりヒトに近い非ヒト霊長類がもつChiaパラログの機能の解析を行い、食性とキチン分解能の関係を明らかにする。そして、すでに明らかにした食虫性の動物がもつ5つのChiaパラログの機能と配列との関係から、その進化過程を推定する。
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