研究課題/領域番号 |
22KJ2750
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補助金の研究課題番号 |
21J40111 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
森 いづみ 上智大学, 総合人間科学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 国際学力調査 / 社会経済文化的地位 / 私立学校 / 教育の市場化 / 社会階層 / 学習意欲 / 国際学力調査データ / パネル調査データ / 日本的特徴 / 自己肯定感 / 通塾 / 私立中学 / 因果効果 / パネル調査 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、日本の学齢期の生徒の学業意識や人間形成の過程について、国際比較と計量分析の観点から検討を行い、その日本的なパターンやメカニズムの解明を目指すものである。とくに生徒の社会化が行われる学校の内部過程に着目した分析を行う。この目的のため、学齢期の生徒を対象とした国際学力調査データやパネル調査データを用いた計量な分析を行い、国際比較も交えながら日本の特徴を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和5年度は,以下三つの方面で研究活動を行った. 1.パネル調査データを用いて,公立小から公立中へ進学した生徒と,公立小から私立中へ進学した生徒の学校生活や学びに対する意識や行動が小 6~中 3 の間にどのように変化するかを成長曲線モデルで示した.私立中学に進学することの効果の大きさは性別や成績,親学歴によって変わるが,私立中進学者全体で見れば正の効果はあまり大きいとは言えず,その効果は中 3 にかけて縮小する傾向にあった.学校や授業への好感度の変化が生じる理由を詳細に分析したところ,授業への好感度に関しては学校でのアクティブラーニング系の授業頻度や生徒の教員に対する認識が背後で関連している可能性を見出した. またOECD国際教員指導環境調査(TALIS)や国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)のデータを用いて,日本の公立中学と私立中学の間で,学校制度や教員の勤務環境,生徒の意識や行動がどのように異なるかを分析し,翌年度出版が予定されている英語書籍の原稿を執筆した. 2. 社会経済文化的地位指標(ESCS)の構成と学力への影響について学術的な考察を行った結果,両親大卒の有無からなるからなるカテゴリのみから教育格差を語るような結果の示し方は,日本では比較的差の大きい部分に着目している一方で,職業や家庭の所有物を用いた場合は日本は国際的に見るとそこまでの差がない点についても同時に注目する必要があることを示した.国際比較において,ESCSのような一元的で使い勝手の良い指標があることの恩恵を理解しつつ,個々の構成要素にも目を向けた分析を行っていく必要がある. 3.インタビュー調査と事例研究に基づき,国の教育政策が自治体レベルの教育実践に下りていく過程で,いかに民間教育事業者が関わっているかの構造を分析した.結果を論文にまとめ,日本における教育の市場化に関する丁寧な議論の必要性を提起した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,研究課題の中心的な概念の一つである出身家庭の社会経済文化的背景に関する分析を深めることができたことと,公立学校と私立学校の違いに関する分析を通じて,家庭とは独立した学校の効果について検討できたことが理由である.
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今後の研究の推進方策 |
残り半年間の期間で,これまでに行ってきた研究の総括を行う.現在までの研究蓄積もふまえ,先行研究に対する本課題の位置づけを明示しながら,家庭の出身背景と学力の間にある具体的なメカニズムについて,1)国際比較や経年変化,地域差や学年ごとの違いに注目し,2)学習時間や学校外教育,学習意欲等の媒介要因にも触れながら,3)各種の国際学力調査やパネル調査データの長所を生かした分析手法を通じて,上述のメカニズムへの理解を深めることが本研究の到達点となる. 一方で,日本の教育の特性を解明する上で,現在の大規模調査では十分とらえきれていない可能性のある不登校の生徒,外国人等不就学の生徒,特別支援学校の生徒等といった様々なマイノリティ集団の生徒の存在について,等閑視すべきでないことも,あわせて本研究の限界として伝えていく必要がある.
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