研究課題/領域番号 |
22KJ2758
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補助金の研究課題番号 |
21J00046 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
林 凌 成城大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 消費者 / 消費社会 / 地域開発 / 余暇 / 消費者主権 / コンピューティング / 管理社会 / マーケティング / 産業社会論 / 新自由主義 / 地域社会学 / 地域計画 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代日本における社会変容を「新自由主義的統治」に適合的な人間の形成という観点から明らかにするものである。具体的には①管理社会の規定的条件たる、人間の「数量的把握」を可能にした歴史的条件の解明。特に近代日本におけるコンピューティング史を通じて、人々の属性や行動の数量的把握がどのように生じたのかを明らかにする。②「新自由主義的統治」に適合的な労働主体の歴史的形成過程の解明。特に現代日本における企業主導型地域開発の条件を、政策史的・労働史的側面から明らかにするとともに、現代の地域開発を支える人々の心性を調査し、過去の地域開発研究の知見と比較検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、「消費者」という言葉/概念/存在に着目することで、日本において「新自由主義的統治」を可能とする諸要件がいかにして生じたのかを明らかにすることを目的としている。本年度の実績は以下の通りである。 ①「新自由主義的統治」の(見かけ上の)統治者であり統治される対象としても定式化される、「消費者」という概念の浮上過程の検討。特に、近代日本における消費者主権論の展開を、知識人の実践を通じ明らかにすることで、従来「消費者民主主義」をめぐる議論が存在しないとされていた戦前期日本においても同様の議論が存在し、かつそれは戦中期を経て戦後期の言説空間に影響を与えるものだったことを明らかにした。これは、「新自由主義的統治」の主要イデオロギーたる、「社会の統治」という考えが、いかに日本にて生じたのかを実証的に明らかにするという点において、斯学に重要な知見を提供するものである。 ②「新自由主義的統治」を可能にするインフラとしての、「計算機/計算メディア」の普及過程の検討。特に、戦前期日本における統計業務や、会計事務において、「そろばん/大福帳」から「コンピュータ」への移行が、どのようにして生じたのかを先行研究の知見を踏まえ複合的に検討し、従来過渡期の産物としてみなされがちな機械式計算機が持つ重要性をメディア史的観点から明らかにした。 ③「新自由主義的統治」のイデオロギーが浸透した現代社会における、「公共」の有り様の変化に関する検討。特に、従来公共セクターによって展開されていた地域開発において、民間セクターの介入が激しくなっている現状を踏まえ、特定地域における大規模開発が地域社会に与える影響と、その開発形態を私たちが是認してしまう理由を、経験的調査を通じて一定程度明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していた方向とは少々異なる方向に研究が派生しているが、結果的におおむね順調に進展している。まず、①で示した消費者主権論の史的展開については、2023年5月に研究成果が出版されるなど、研究の一区切りをつけることができた。また、②と③については、①から派生的に出てきた研究テーマであるが、2022年度中の調査をもとに、複数の査読論文を現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
②と③で示した研究テーマについて、今後も現地でのインタビュー調査や資料調査などを通じて検討を深め、調査内容に即した研究論文を複数執筆する。現在これらのテーマと関係する、複数の研究者との共同研究が進行中のため、可能な場合はそうした研究者との協働によって調査を効率的に遂行する。また、①の研究テーマについては一区切り付いたものの、今後も同時代における様々な知識人の議論や、戦後日本における消費者主権論の変節について、並行的に分析していく予定である。
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