研究課題/領域番号 |
22KJ2765
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補助金の研究課題番号 |
21J00395 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊東 香純 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD) (80899039)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 精神障害 / 低開発 / 社会運動 / 当事者 / アフリカ / 多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、活動家へのインタビュー等を基に、アフリカにおける精神障害者のグローバルな社会運動を記述する。低開発地域の障害者に関する研究は、徐々に進められているものの、多くは各国の運動を別々にその地域の社会的文化的状況を前提に検討している。これに対して本研究は、運動のトランスナショナルな側面に注目し、異なる状況にある人々がどのように連帯して活動しているのかを考察する。これまでの調査で、アフリカの精神障害者の運動が、欧州の精神障害者の運動と交流してその活動から学び、欧州の政府等から資金援助を得つつも、西欧で展開されてきた組織形態や主張とは異なる組織や主張を持って活動してきた様子が明らかになってきた。
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研究実績の概要 |
アフリカ地域の精神障害者の社会運動についての調査を目的として、ウガンダ、ルワンダ、ケニア、タンザニアの都市部で6週間のフィールドワークを実施した。2021年度は、新型コロナウイルス感染症の流行により、現地に渡航できなかったため、初めてのフィールドワークとなった。文書資料の収集と、障害者の社会運動組織で活動した経験を持つ12名にインタビューをおこなった。文書資料は、当初期待していたほど収集するできず、口述資料収集の重要性が一層明確になった。他方で、これまでほとんど研究の蓄積のないアフリカの精神障害者の社会運動についての貴重な証言を得ることができた。その結果、これらの地域の運動には、精神障害を持つ当事者としての運動がそれほど重視されていなかったり、薬物療法にアクセスするための活動をしていたりといった、特徴を持つ可能性があることが示唆された。これは、先行研究で検討されてきた欧米の運動とは相反する特徴であり、このような差異がありつつ、どのようにグローバルに連帯してきたのか、してこなかったのかを明らかにしていくことが本研究の重要な課題となる。加えて、2023年度以降のフィールドワークをより充実したものにするための、各地の運動団体に関する情報や人脈を得ることもできた。 今年度の調査結果は、これから査読付き論文などとして発表していく準備を進めているところである。その準備として、昨年度の調査結果を中心とした研究成果を学会で報告し、有益なコメントもらうことができた。それを踏まえて、来年度以降、査読付き論文として発表していくための準備を進めている。また、インタビューデータを文字起こしし、インタビュイーの許可が得られた場合には、ウェブサイト上に公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と比較して大幅に緩和されてはいたものの、依然として新型コロナウイルス感染症の流行による海外渡航制限は残り、特にフィールドワークする地域の選択に影響があった。具体的には、当初はザンビアでのフィールドワークを計画していたが、外務省の感染症危険レベルに基づく渡航制限により、実施できなかった。 そのような中でも、東アフリカ地域の4カ国で活動する12名の活動家にインタビューを実施できた。12名は、いずれも障害者の組織で国内及びトランスナショナルな活動を活発に展開してきた人物であり、精神障害の当事者を中心に、障害種別をこえた障害者組織の活動家や支援者といった立場で活動してきた人たちである。今年度がアフリカでフィールドワークを実施する初めての年であったため、調査協力を得るのに苦労するだろうと推定していたが、昨年度の調査で築いた人脈などを活かして、当初想定していた以上に多くの方から貴重な証言を得ることができた。 他方で、現地に行けば、アフリカ地域の精神障害に関する文書資料の収集もある程度できるのではないかと推測していたが、大きな成果を得られなかった。 研究成果の発表について、調査データのアーカイブについての査読付き論文を発表できた他、社会学、医療社会学の学会での報告もおこなった。これらで得たコメント等は、本研究の成果を発表していく上で活かせるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査により、2023年度はザンビア及びガーナ、政治情勢が許せばエチオピアの首都を中心とする地域でのフィールドワークが有効であり可能であると判断し準備を進めている。いずれの地域も精神障害者の組織があり、トランスナショナルな活動をおこなっている。それぞれの国に2週間強滞在し、現地の精神障害者組織の関係者にインタビューを実施するとともに、文書資料を収集する。インタビュー対象者として予定している人の中には、既に調査協力の承諾を得られている人もいる。 研究成果の発表について、2022年度及びそれ以前の調査の成果を基にした査読付き論文の投稿を予定している。論文投稿に向けた、社会学、医療社会学、障害学の国内学会、国際学会での報告も計画している。加えて、ウェブサイト上での収集した情報の整理、公開もこれまで通り継続していく。
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