研究課題/領域番号 |
22KJ2768
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補助金の研究課題番号 |
21J21092 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
永井 優也 中央大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 機械学習 / 分析化学データ / 光半導体デバイス / マテリアルズインフォマティクス / 材料作製 / 分析データ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源である水素を得るための電池材料について、近年様々な分野で応用される人工知能(AI)を用いて、効率的に高性能な電池材料を作製する方法の開発することである。従来の材料開発では技術者や研究者の勘や経験、深い知識が不可欠であり、その過程で多くの費用や労力及び時間を要した。本研究では人工知能(AI)を用いることで、どの物質をどのくらいの量でどのような条件で化学反応させればよいかコンピューターに提示させることを目指す。これが実現できれば、人間は提示された条件に従って実験を行うことで、経験や知識に頼らずに高性能な電池材料を短期間で開発可能になる。
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研究実績の概要 |
本研究では代替エネルギー源である水素を得るための手段として注目度が高い水分解電極について、得られる少数の実験データから性能に寄与する因子を特定し、実験条件を最適化するデータ駆動的アプローチを開発することを目的とする。さらに、この手法を用いて高性能な光半導体電極の開発を行う。 本年度は電極性能を予測し、そこに寄与する要因を特定するための機械学習法をブラッシュアップして、様々な電極材料やデータについてロバストに適用できるように改良した。実験で得られる限られた量のデータから必要な情報を取り出すために、フィルター処理やクラスタリング等の数理的なデータ処理手法を適切に組み合わせた。さらに、通常解釈が困難な機械学習モデルを解釈するSHAP分析を適用して、材料性能に寄与する要因を明確にして可視化することが可能となった。本手法は酸化鉄、バナジン酸ビスマスといった単一化合物で構成される半導体電極だけでなく、酸化タングステンとバナジン酸ビスマスを接合させた2層電極や表面での水分解反応を促進するために、電極表面をコバルトイオンで修飾した酸化鉄電極といった複合材料について適用可能である。その結果、光半導体電極についてこれまで議論されてきた性能に寄与する重要な要因だけでなく、研究者がそれまで見過ごしてきた、材料性能に影響しうる別の要因を抽出することができた。 このように限られた数の実験データだけが得られる条件下で、機械学習を適切に用いることで、材料開発に役立つ情報を定量的に、かつ事前知識を用いずに得ることができることが本研究において重要な点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、光半導体電極について分析データが持つ情報から、機械学習を用いて重要な要素を特定し、材料性能を予測する手法について、新たな数理的処理を導入することで汎用性を向上させた。また、特定した重要な要因の材料性能への寄与を可視化する手法を導入し、材料作製条件の分析データを介した最適化を試みた。その成果について国内学会と国際学会で1件ずつ発表を行い、論文としてまとめ現在投稿中である。また、本手法を様々な材料に適用して得られた結果も論文としてまとめ、投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに分析データから材料性能を予測し、材料性能に寄与の大きい要因を特定する手法を確立できた。そこで本年度は、そのような重要因子を、材料作製プロセスパラメータを介して操作することで、材料性能をデータ駆動的に最適化するスキームの確立を目指す。すでにバナジン酸ビスマス電極を例に、材料作製と分析データの測定及び機械学習による解析を逐次的に繰り返しながら、作製条件パラメータと重要因子間の相関を推定するモデルの構築に取り組んでいる。また、性能の再現性に課題のある酸化鉄電極に対して、作製条件の人為的、環境要因等を調査し実験誤差が最小となるように作製プロセスの変更や多様化に取り組んでいる。実際の作製できるデバイスの数は一般に機械学習に必要とされているデータ数よりも大幅に少ないため、試料作製に際しての誤差を減らしていくことは、限られた少数のデータから知見を得るデータ駆動的なアプローチをとる本研究では重要である。さらに、機械学習を用いて、再現性の高い作製条件も考慮に入れながら、電極性能を最大化する作製条件パラメータを推定できるような手法の確立を目指している。 このように、得られた予測モデルをもとにデバイス性能が最適となる実験条件を求め、それに従ったデバイス作製と性能評価を行う。以上のような計測データを軸にしたデバイス作製、デバイス特性の測定、得られたデータの機械学習による解析とこれを踏まえた実験計画の決定を1つのサイクルとして反復する帰納的な材料最適化手法を確立し、これらについて結果を取りまとめ学会発表や論文発表を行う。
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