研究課題
特別研究員奨励費
ナンセンス変異性疾患は、構造遺伝子中に未熟終止コドン(PTC)が生じ、機能不全のタンパク質が生成することにより発症する。申請者は、PTCを読み飛ばす(リードスルー)活性を有する(+)-ネガマイシンに着目した構造活性相関研究により、既存の誘導体とは異なる新規骨格をもつ分子空間固定型ネガマイシンの獲得に至った。本研究では、ナンセンス変異型遺伝性疾患の新規治療戦略の確立を目指し、分子空間固定型ネガマイシン誘導体を基盤とした創薬化学研究を展開するとともに、ネガマイシン誘導体の標的分子同定を達成する。そして、標的分子の立体構造に基づいた論理的薬物設計により、さらに高活性な医薬品候補化合物の獲得を図る。
ナンセンス変異性疾患は、構造遺伝子中に未熟終止コドン(PTC)が生じ、機能不全の不完全長タンパク質が生成することにより発症する。近年、PTCを読み飛ばす(リードスルー)ことで、機能を持つ完全長タンパク質を生成させる方法が注目を集めている。ネガマイシンは1970年に放線菌より単離同定され、PTCを読み飛ばす(リードスルー)ことが報告されている。これまで、申請者はネガマイシンに着目した創薬研究を展開し、強力なリードスルー活性を有する誘導体TCP-304の独自開発に成功している。一方、ネガマイシン誘導体の作用メカニズムは未解明であり、本創薬研究の課題となっている。そこで本研究では、TCP-304を先導化合物とした構造活性相関研究の継続により、さらに高活性な誘導体を得るとともに、ネガマイシンの作用標的同定をめざしたケミカルバイオロジー研究を展開した。その結果、まずTCP-304を基盤とした誘導体合成により、TCP-304の2.5倍強いリードスルー活性を有する誘導体TCP-306をはじめとする複数の新規高活性誘導体の獲得に成功した。ネガマイシンの作用標的同定研究においては、ネガマイシン誘導体に光親和性官能基を修飾した化学プローブを新たに合成し、細胞抽出液を用いたプルダウンアッセイを実施したが、誘導体に由来する特異的な標的分子の同定には至らなかった。一方、誘導体のリードスルー活性評価の過程において、リードスルーの起こりやすさ(リードスルー効率)がPTCの種類とその周辺の塩基配列に影響を受けることが示唆された。そこで、リードスルーのメカニズム解明研究の一端として、ネガマイシン誘導体TCP-306がリードスルーを起こしやすい遺伝子配列的特徴(リードスルー特性)を調査した。その結果、ネガマイシン誘導体のリードスルー特性がアミノグリコシド系抗生物質のそれとは異なることを新たに見出した。
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ACS Medicinal Chemistry Letters
巻: 14 号: 12 ページ: 1807-1814
10.1021/acsmedchemlett.3c00424