研究実績の概要 |
当該年度は、全てD-アミノ酸からなる 16 残基のマイオスタチン阻害ペプチドの構造最適化および新規光増感剤の創製を行った。具体的には、既に報告されている 16 残基ペプチド(MID-35)を構成しているアミノ酸の内、光酸素化を受けやすいトリプトファン残基を他の疎水性アミノ酸で置換したペプチドを合成し、そのマイオスタチン阻害能を評価した。その結果、本ペプチドは置換前のペプチドと同等の阻害活性を有することが確認された。そして、本ペプチドを基盤としてアラニンスキャンを実施し、既知の報告と合わせて光増感剤の導入位置を決定した。それら置換許容性の高いアミノ酸残基に光増感剤を導入した各コンジュゲートを合成した。各コンジュゲートは既知の23残基のペプチドからなるコンジュゲートと同様にマイオスタチンを光酸素化によって阻害した。特に、N末端に光増感剤を導入したコンジュゲートはマイオスタチン選択性および阻害能に優れていた。本成果をOkamoto, H., Taniguchi, A., Hayashi, Y. et al., RSC Med. Chem., 2023, 14, 386-392. にて報告した。 続いて、新規オンオフスイッチ型光増感剤を合成し、その光酸素化能およびその機能評価・メカニズム解析を行った。その結果、新規光増感剤は 730 nm という人体への適応が可能な長波長光照射下において、一重項酸素を生成していることが示唆された。すなわち、本光増感剤は光酸素化能を有していると考えられる。 マイオスタチンの阻害は、様々な筋萎縮性疾患の治療法になり得る。そのため、これらの結果は本手法の in vivo 実験への適用可能性を高め、ひいてはマイオスタチンの光酸素化による阻害という新たな治療戦略の提供に繋がると考えられる。
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