研究課題/領域番号 |
22KJ2871
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補助金の研究課題番号 |
21J00668 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福島 可奈子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | メディア考古学 / のぞきからくり / 錦影絵 / アニメーション / 幻燈 / 玩具映画 / 映像メカニズム / 活動写真 / からくり |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、メディア考古学の視座から「からくり」という日本独自の複合的技術・概念に基づく視覚メディア・システムの系譜を掘り下げる。西欧から渡来した機械式時計の技術やレンズ応用の視覚装置を改変した「からくり」は、人形芝居や影絵等と結びつけられて以降、覗き絡繰、廻り灯籠、錦影絵、写し絵、組上げ灯籠、西洋幻燈、ミュートスコープ、ステレオスコープ、紙芝居など時代と共にその流行は変化するが、その変容は絶えず平絵(2D)か立絵(3D)また立体を動かす視覚表現技術の混淆と循環であり、それが現在の日本の「アニメ」や視覚メディア・システムの源泉となっていることを実証的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
最終年度は本研究のまとめとして、江戸期から昭和期に至る日本の視覚メディア表現に頻出する「あの世」の表象の変遷とその技法(メカニズム)の解析をおこない、それらの成果を学会等で発表した。 まず日本映像学会の大会発表では、覗き絡繰や錦影絵の人気演目である地獄極楽や妖怪・お化け等の表象の特徴がどう変遷するかを検証し、その表現法が紙芝居や映画やアニメーションにまで脈々と受け継がれていることを複数の実物史料に基づいて実証的に論じた。さらに、今から101年前に現実の地獄絵図となった関東大震災の報道記録フィルムが発見され、報告者が歴史考証をおこなった結果、そのフィルムがこれまで未知だった関東大震災の津波被害の記録映像であることがわかり、新聞等で報道された。 また、専門家の協力の下で戦前の映像装置の光量測定を実施した。異なる時代の大小様々な投影装置のスクリーン上の照度等を複数の映写距離から測定し、データ化した。そのことで、例えば高ワット数の電球を複数使う映写装置であっても、明かり漏れ等で集光率が低下して投影画の照度が低くなる事例や、視覚的な印象と実際の照度が一致しない事例など、目測だけでは曖昧な点を数値で明瞭化することができた。また日本映像学会メディア考古学研究会の発表では、レコード同期の玩具映画等の復元・実演もおこない、当時最先端の機械工学・光学と印刷技術が集結した家庭用アニメーションが、アレンジが加わりつつも江戸期から変わらぬテーマを持ち、「手廻し」という前近代的なメカニズムを有していたことも示した。 以上3年間の研究で、日本の視覚装置の特異性は個々の技術ではなく、光やレンズの活用をめぐる「光と影」の認識のあり方と、技術的なアレンジメントの多様性にあることが明らかとなった。またその成果の一部を学術書『混淆する戦前の映像文化―幻燈・玩具映画・小型映画―』(2022年、思文閣出版)に盛り込んだ。
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